hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

パンタの声

パンタの声はロック向きではない、と書くとヘルメットをかぶった全国のパンタファンから袋叩きにあいそうだ。「なんてこと言うんだ」と。でもそう思いませんか?

 

とはいえ、パンタがロックじゃないとは言ってない。

 

僕が初めて彼の声を聴いたのは「1980X」(1980)というアルバムだった。その中の「ルイーズ」という曲をラジオで聴いたのだ。「たたき割ったビール瓶握りしめて」「血だらけでぶっ倒れているオレに」とたたみかけるように歌うパンタはかっこよかったし、少し鼻にかかったその歌声に魅せられた。高校時代、隣に座っていた同級生が持っていたこのレコードを早速借りて全曲聴いてさらに彼の魅力にやられてしまったのがパンタとの付き合いの始まりだった。

 

最初に彼の声はロック向きじゃない、と書いたがそれは歌い方が「クサい」からだ。と言うとまたファンから袋叩きにあいそうだ。でも決して嫌いだと言っているわけじゃない。「クサい」ところも含めて僕はパンタの声が好きだ。そして彼の声質は唯一無二のものだ。誰にも真似はできないんじゃないかな。

 

そうそう、パンタはロックじゃないと言っているんじゃない、だった。

 

そうだなぁ。ライブでマスターベーションをしたことはロック?まあそうだろう。タブーに挑戦する政治的に過激な歌詞とラディカルなライブパフォーマンスによって、発売や放送禁止、コンサートへの出入り禁止?当時それはそれはロックな事だったのだろう。頭脳警察の1st、2ndの一部の曲はロックな曲調でパンタも叫んで歌っている?「世界革命戦争宣言」は後の遠藤ミチロウの「先天性労働者」を生む素晴らしい「発明」だったし、「銃を取れ!」も素晴らしいロック・ナンバーだ。当時のライブは客席から飛んでくる物をよけながら歌っていたという自身のコメントもある。そんなパンタ過激ヴァージョンにも彼のロック的要素は大いに感じられるのだが、僕としては突然スゥィート路線に走った「KISS」を臆面もなく発表するところに僕はパンタのロック魂というか恐ろしさ(「すげーな、パンタ。よくこんなことできるな」)を感じる。シングル「悲しみようこそ」のイントロを聴いた時、そしてポップなメロディにのったパンタの声が聴こえた時は驚いた。

 

頭脳警察のイメージに疲れ、ソロになり、そしてバンドを結成したパンタ。PANTA&HALの後期に出会った僕であったが、ライブアルバム(1980)をリリースした後、突然ソロで「KISS」(1981)を発表する。この作品を聴いて「パンタを殺して俺も死ぬ」と言ったのは誰だったかな?不買運動もあったな。今では考えられない。それに加えて同時期に突然頭脳警察セカンドが再発売される(嬉しかったけれど、何故このタイミングで?と思った)。「KISS」を発表するにあたってパンタもいろいろ考えただろう。今までのパブリックイメージとのあまりの乖離ぶりにはポーズかもしれないが「こんなの作ってみました。だってオレこういうの好きなんだもん」とコメントする。真面目に答えたものとしては「ジョン・レノンが死んだ時、ロックであって同時にポップスでもある歌もあり得るんだと思い始めた。思いっきりsweetにやりたいと思ったんだ」というコメントが残されている。物凄い逆風が来ることを予想しながらも発表してしまう。そういうところがロックなのだ。しかもしつこく次の作品もスゥィート路線だった。

 

その後はHAL時代の「マラッカ」のような政治的な歌やアルバム「16人格」「クリスタル・ナハト」、素直なラブソング等をリリースしていた。僕は、政治的歴史的背景を歌にしたり、それも含めつつ男女の関係も歌ったりすることにかけて、彼の右に出る人はいないと思っている。そしてちょっと落ち着いたかなと思った頃(1990年)突然頭脳警察を再結成する(1年間だけ)。「頭脳警察7」と題されたアルバムと、そのライブアルバム「LIVE IN CAMP DRAKE」、そして「歓喜の歌」というアルバムを発表した後再び活動停止する。これもパンタがただやりたくなったからトシに声をかけたんじゃないかな。僕は「LIVE IN CAMP DRAKE」が好きで(ビデオも発売されていた)、なかでも「スホーイの後で」がお気に入りだった。この時のバンドは素晴らしいロックバンドで(グルーヴァーズ藤井一彦のギターが最高だった)頭脳警察時代の名曲をかっこいいロックナンバーに仕上げていた。でも僕はトシと二人でやった「スホーイの後で」のアコギとトシのパーカッションにパンタの怖さ、ロックを感じたな。そして前にも書いたが「頭脳警察7」の最終曲「万物流転」は不滅の名曲だ。

 

いかん、タイトルはパンタの声だった。パンタの声質は誰にも真似できない天性のもの、歌い方に時々「クサさ」が入る、しかしそれでもパンタの声はどんな曲にも合う素晴らしい声だ。今聴くと「KISS」に違和感は抱かない。むしろその後のパンタの曲作りに影響をおよぼしているほどだ。「NAKED」のことも書きたいんだけどね。これくらいにしておこう。

 

 

 

昨日は、あらゆる媒体がジョン・レノンの日だった、と思う。僕は少しずらして近いうちにジェシエドデイビスについて書こうと思う。←渋いね

 

最近は選んだ人のことを読者が知っていることを前提として書いてしまっている。もっと丁寧に書かねば。