1972年から31年の空白を経て~ハワード・テイト~

1か月ほど前にピーター・バラカンのカタログ本を購入して、プレイリストも作ったことを記事に書いた。アリソン・クラウスロス・ロボスの紹介もしたはずだ。しばらくはそのプレイリストを聴いていたが、やがて他のブームがやって来て聴かなくなった。そのプレイリストの後半に位置していて埋もれていた曲(ほとんど聴かなかった曲)が急に僕の心に浮上してきた。その中でも特に僕の心を撃ち抜いたのがハワード・テイトである。

 

数十年ものブランクを経て復活したアーティストのことを何回か書いてきた(パティ・スミス早川義夫大江慎也等)が、彼もその一人である。31年のブランクを経てカムバックした数奇な人生を送った人である。そのことをまず書かねばなるまい。

 

テイトは、1943年ジョージア生まれのシンガーである。1967年にデビュー・アルバム「ゲット・イット・ホワイル・ユー・キャン」を発表する。この頃の曲でR&Bのチャートに入ったのはわずかだった。その後1969年、1972年にもアルバムを発表するが、鳴かず飛ばずだった。しかしテイトの唱法はアル・グリーンとよく比べられていたそうだ。

 

しかし、1976年に離婚、また火災による娘の死などの不幸が続き、テイトは音楽業界からドロップアウトする。後はお決まりのドラッグ、アルコール浸りの生活が待っていた。ホームレスになり、8年間ドラッグ街をさまよっていたそうだ。

 

しかし、テイトは1990年代に入り、リハビリ施設に入り、クリーンになった。そして牧師になる。そんな彼をジャージー・シティのDJが見つけ出した。2001年のことである。そして2003年に発表したのが「リデスカバード」だった。その最終曲である「ゲット・イット・ホワイル・ユー・キャン」の美しさに遅まきながら気がついたというわけだ。2006年には「ア・ポートレート・オブ・ハワード」というアルバムを発表。ルー・リードランディ・ニューマンの曲もカヴァーしている。

 

そして2011年、72歳で死去する。「ア・ポートレート・オブ・ハワード」では「Louisiana 1927」という曲を僕は気に入っている。

 

「ゲット・イット・ホワイル・ユー・キャン」(ジャニス・ジョプリンもカヴァーしている)の話に戻るが、この曲はタイトルからも分かるようにデビュー・アルバムに収録された曲のセルフカヴァーである。元歌は黒っぽい。セルフカヴァーの方はもっとクリアに響いてくる。どちらもいいが、地獄を通り抜けてこの声に辿り着いた2003年版の方が僕にはグッとくる。

 

 

声質は全然違うんだけど、何だか忌野清志郎の「雪どけ」を思い出しちゃうんだよな。

 

 

あとそのプレイリストにはBill FrisellとScrapomaticとBill Jonesという人の曲が入っていてテイトと一緒に毎日聴いている。この人達の紹介もいつかしたいものだ。