頭がおかしかった頃に・・・

恥を忍んで頭がおかしかった頃のエピソードをひとつ書くとするか。それは「髪をオレンジ色に染めた」事件だ。勿論病休していた時のことである(10数年前のことになるかな)。

 

事の顛末はこうだ。学校を異動して少人数担当になった僕は、2学期末に息切れして12月上旬に病休を取ることにした。

 

みんなからも「ゆっくり休んでね」と労いの言葉をいただき(それが水曜日のこと)、気持ちよく病休に入った。

 

次の日の朝から僕は、当時凝っていた油絵を描くべく2階の油絵用の部屋に入り、まさにチューブから絵の具を出していた時だった。突然家の電話が鳴った。不吉な音だった。だって家の電話なんてほとんど鳴らないもの。

 

受話器を取った僕は「はい」とだけ答えた。校長からだった。校長は「hanamiさん、昨日分かったんだけど、今回のように週をまたいで病休はとれないんだって。だから病休は来週月曜日からになるから、明日は学校に来てください。それで、明日は年休も取らないで下さい」と一方的に言われガチャンと切られた。

 

僕は何が起こったのか分からなかった。どういうこと?俺、もう学校に行くつもりはないんだけど。明日来いって?そして1日中いろって?勿論もう油絵も描く気が起こらずその日一日あわあわしたりぼーっとしたり怒りがこみ上げたりして精神的におかしくなってしまった。何より校長の事務的な言い方に怒りを覚えた。もう気持ちとしては(2学期は)終わっているのに、どうしてああいう言い方をされなきゃいけないんだ?

 

憤りが収まらないまま次の日に学校に行くと、また周りの人から「ひどいね」と労ってくれた。僕は授業には入らず参観するだけにした。放課後少人数の部屋で本を読んでいると入り口に人影が見えた。教頭だ(←当時天敵だった)。僕がいるか確認しに来たようだ。ますます腹が立った僕は、定時に誰にも分らないように帰った。

 

その時からもう頭がおかしくなっていたのだろう。僕は「手首を切るか、髪の毛を染めるか。どっちにする?」と知らず知らずのうちに自問自答していた。なんでこんなことを思ったのだろう?

 

土曜日の朝もその思いは消えなかった。しかし手首を切るのは怖い。勇気がいる。今思い出しても怖い。だから、いつも行く散髪屋さんに行ったんだっけ。僕は迷っていると言えないと思い、「髪の毛を染めて下さい」と言った。「どんな感じで染めましょうか?」といつも僕の髪の毛を切っている人が白髪を染めるんだと思い込んでいったので、「オレンジにして下さい」と言ってしまった。

 

まあ、そこからがいろいろあったんだけど(僕が教員だということも知っていたし)、結局オレンジに髪の毛を染めてしまった・・・。

 

問題は妻だ。そりゃそうだ。怒るに決まっている。僕は妻の帰りを息を飲んで待っていた。「ただいまあ」と帰って来た僕の方をなぜか向かないで食材を冷蔵庫に入れる妻。そして僕の頭を見てホントに息を飲んでいた(っぽい)。「どうしたん?」と聞かれたので「うん・・・」と言い、事の顛末を話した。「ふぅ~」と長い溜息をつき、「あまり出歩かないことね」とだけ言った。

 

結果的には3週間オレンジ頭だった。かつて橋本治は「髪を染めると人格が変わる。だから中高生は染めたらいかんのだ」と言っていた。僕も人格が変わるのかな、と思ったけど、外へ出てもそんなに注目はされなかったし(と思いたい)、僕も「おらおら~」ってな感じにはならなかった。こんなものか、と思った。3学期が始まる前日に髪を黒に染めに行った。

 

こんな話を書いている今、僕の頭は大丈夫なのだろうか?心配になってきたな。でも今日は朝から運動できたからよしとするか。

 

ひいちゃいます?よね?僕もあの時の自分にひいちゃうよ。