hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

妻と僕(パート2)

前回は、何となく固有名詞をつけて書いちゃったので、妻の名前も考えてみた。名付けて「アメダさん」。友だちからは「アメちゃん」と呼ばれていたことにしよう。今日の最後の方に登場してくれればいいのだが。

 

大学4回生、つまりコンドウさんが卒業する年度の初冬には僕たちは、周りから見て明らかなほど「付き合っていた」。いろんな所へ2人で行ったり友だちを交えて行ったりしていた。勿論お互いの家の行き来もしていた。

 

僕は大分前から借家に住んでいた。大学にもコンドウさんのアパートにも近かった。やがてここはみんなが集まる場所になり、「焼肉パーティ―」「土鍋パーティー」「手巻き寿司パーティー」を開いたりしていた。僕の友だち史上最高に盛り上がった時期だった。バンドのメンバーもいたしね。

 

そして、いよいよ彼女らの卒論も通り、「卒業旅行」を決行することになった。僕も混ぜてもらった。というかそれが当然、みたいな空気だった。

 

付き合うようになる直前からこの頃までが一番楽しい時期だった、と今では思う。卒業したら彼女は地元に戻り、講師をしながら教員採用試験を受ける予定だったし、僕は大学にとどまり、何とか卒業するべく勉強をし、教員採用試験も受けるつもりでいた。(←まだ軽い気持ちだった)

 

彼女と会う回数は大幅に減り、バンド活動もなくなって僕は孤独だった。あまりの孤独感に耐えかねて原チャリで実家へ帰ったほどだった。とにかく人恋しかった。

 

離れてからはお互いの気持ちがすれ違うことが多くなった。勿論楽しい記憶もたくさんあるが。コンドウさんは手紙好き(←またしても手紙好きの女性だった)だったので、よくやり取りをしていた。僕はコンドウさんの友だちとよく喋るようになった。彼女とは教員採用試験を受けるにあたっての勉強を一緒にする中で、コンドウさん関係のことにもいろいろと相談にのってもらった。例えば「あなたは会うとそればっかり」と言われたことなんかを相談しちゃってた。

 

つまり何というか、僕は性欲に打ち勝とうとしていた。どのようにして?性欲を無くすためには食欲を無くせばいいと考えたわけだ。バカな男である。蕎麦屋でバイトしていたので食事はその時だけ。あとは何も食べない作戦でいけば食欲も無くなり、それによって性欲も無くなる、と考えたわけだ。サウナにもせっせと通っていた。

 

しかしそんなものはごまかしだ。だから、次第に彼女とは険悪になっていったし、「ああ、もうダメなのかな」と思うようになった。

 

結局のところ、コンドウさんは大学の時から僕のことを好きだったのか?と言われれば分からない、というのが正直なところだった。2人からは「結婚」という言葉も出なかった。こっちは留年生、あっちは講師、という不安定な立場だったことも大いに関係しているし、住んでいる県が違うことも関係していた。その次の年も僕は採用試験に落ちた(彼女は合格したんだっけ?したような気がする)。そうしたら今度は教諭と講師という立場で付き合うことになる。

 

彼女の合格が決まったある日、僕達はデートをしていた。しかし何となく分かるもんだね。別れを切り出したがっているってのは。僕は思い切って言った。「まだチャンスはある?」と。コンドウさんは不可解な笑みを浮かべて「どうかな?」と言った。それがコンドウさんとの最後のデートになった(最後の言葉は例によって手紙でだった)。コンドウさんの友だちに会ってそのことを報告すると「あなたは交通事故に遭ったようなものだよ」と含みのある事を言われた。分かるようで分からない言葉だった。きっと、僕の知らないことがたくさんあったのだと思った。

 

今でもよく覚えているのは、実家でヘッドフォンをしてジョン・レノンの「スタンド・バイ・ミー」をかけて涙していたら、父がガラッと僕の部屋の戸を開けた。涙にまみれた僕の顔をしばらく見てすっと戸を閉めた。

 

それからは父とはよく、母が寝てからそっと外へ飲みに行くことが多くなった。いつもとりとめのない話ばかりだったけれど楽しかった。

 

僕は結局4回目にして教員採用試験を合格した。当時は倍率が高かったんだよ、と言っておこう。赴任校は以前講師で行ったことのある小学校だった。プライベートは別に充実したものでもなく、ただ「人を好きになりたい」という気持ちで破裂しそうだった。

 

1学期が始まり、初任者研修も楽しく取り組めているし、充実した生活を送っていた。夏休みが終わり、9月1日に2学期が始まった。車を停め、玄関に向かうと見知らぬ車が駐車場に停まっている。そして中から女性が降りてきた。

 

 

 

 アメダさんだった。実に4年振りの再会であった。