hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

フォーハンドレッド外伝 最後(チアイの妖精日記)

2回目の授業は昨日より熱の入ったものだった。私は少し安心した。そしてその時すでに私は覚悟を決めていた。


3回目。神様との約束を破って人間界に行った日。この日の夕方から次の日の朝までのことは決して忘れない。


私はやりたいこと、やるべきことをすべてやった。神様との約束を破ってまで。どうなるかははっきりしている。私は「妖精としての死」を迎えることになる。神様のいる、あの深い森の中で私は身体を失い、永遠に魂として彷徨うことになるのだ。魂には何の意志も持たされない。ただそこにいるだけ。そんな状態が永遠に続くのだ。


私は、森へと向かった。タナカさんとの日々を思い浮かべながら。ただひたすら森へと向かった。そして雲のような形をした神様の前に来た。
「どの面下げて来ると思ったら、もう覚悟を決めているようだな。」
「はい。約束を破ってしまい申し訳ありませんでした。」
「チアイ。お前は、私が怖くなかったのか。」
「怖かったです。でもタナカさんを救いたいという気持ちの方が大きかったのです。」
「お前は、タナカに『私もフォーハンドレッドになる。』と宣言していたな。あれはどうするのだ。」
「私の意志が消えるまでその気持ちを持ち続けようと思っています。」
「そうか。それでは、お前に、『妖精としての死』を与える。」
「はい。」
「ただし、その『意志』だけは奪わないでおく。」
「どういうことでしょうか。」


「お前は人間界に行き、その眼で人間界の欺瞞を見てくるんだよ。ただし、見るだけだ。余計な介入は許さん。お前が見た人間界の欺瞞は同時に私も見ることになる。あとは私の仕事だ。介入できないのは辛いぞ。タナカも助けてやれんぞ。それでもいいか。」
「私は、これからもタナカさんを見続けることができるのですか。」
「そうなるな。お前はタナカさんタナカさんばかりだな。」
「すみません。」
「いいか。人間のいる世界は欺瞞に溢れている。これはどの世界でも同じだ。それを必要悪と言う者もいるだろう。人間界を曇りのない眼(まなこ)で真っ直ぐに見ることは難しいことだ。お前にやれるか。」
「やります。やってみせます。」
「分かった。それでは、今この瞬間からお前は『意志を持った魂』だ。」
私の身体は消えて無くなっていた。「意志を持った魂」になった。
私は、すぐに人間界へ降りていった。フォーハンドレッドになるために。