欠落男、ここに在り

「僕は仲のいい家族見ると、自分が欠落している気持ちになります。自分自身が欠陥品に思えてきて見てて辛いんです。仲のいい家族。親孝行する人。子どもを大切に思う親やそういうの全部」

 

 

先週の「Tシャツが乾くまで」で、咲子(蒼井優)の旦那である充(松山ケンイチ)が初めて咲子に会った時に言った言葉だ。この回は、波乱の回でネット上で湧いている。後半の充のあまりにも自分勝手な言葉に怒りと戸惑いの感想が殺到しているようだ。上の言葉はドラマの序盤で出てきた言葉である。

 

 

咲子は、この言葉に激しく同意した。そして僕もドキッとした。俺と同じじゃないか、と。今日は、この欠落男(僕)が昨夜どうだったかについて書きたい。本当は書くつもりはなかった。あまりにも恥ずかしい話なんでね。でも妻に「このことを書いて」と言われた。「だって、こんなん誰にも言えんやん。恥ずかしくて。でも2人だけの話にしとくのもなんか嫌。だからあんたの読者さんに読んでもらいなよ」と畳みかけられた。

 

 

そうだよな。これは姉にも他の親族にも言えないな。一丁書いてみるかと思ったのが昨夜のことだった。今朝は、疲れのせいでぐっすり眠ることができた。熱も下がって目覚めもスッキリだ。そろそろ明るくなる時間だし、今日最初の仕事として書いてみるか。

 

 

話は、金曜日に遡る。僕たちは、姉と墓参りに回った。それであー疲れたやっと終わったー、それにしても俺はこういうのは嫌なんだよなー、抵抗があってというようなことを書いた。きっとそのせいでバチが当たったんだと思う。

 

 

土曜日は、朝から怠かった(これも書いた)。「あー、なんだか怠い」と思っていた時に、電話が鳴った。姉からだった。不吉な予感を抱きながらスマホに耳を当てると姉が言った。「叔母さん亡くなったって」。僕は正直「あー、このタイミングでか」と思った。それでどうするかを聞き、今日のところは動かないことになった。

 

 

怠い。でも明日(日曜)明後日(月曜)は確実に動かなければいけない。姉は、僕と違って母のことも気にかけているし、親戚とも非常に上手く付き合っている。しかし月曜の午前11時に新幹線で東京に帰ることになっている。それも考えながら更に気が重くなってきたところ、妻が2階から降りてきた。僕は「叔母さん亡くなったって」と言った。妻は「えっ?」ときょとんとしている。

 

 

「だから母屋(父方)の叔母さんが亡くなったんだよ」(←ここ大事①)

「えっ?そうなん・・・・・・・?」(←ここも大事②)

 

 

その後、姉からのグループLINEで妻と姉はやり取りをしていた。僕は未読スルーしていたが、その数はどんどん増えていった。意を決してLINEを開いてみた。

 

 

(土曜日)

姉:弔いから帰宅しました。火葬場の関係で、通夜は月曜日7時から、葬儀は火曜日12時から。明日は仮通夜です。家族葬なので、参列については、またお知らせします

妻:分かりました

 

(日曜日)・・・僕が発熱した日

姉:風邪お大事に。家族葬やし、ほんとなら今日の仮通夜に行けばいいと思ってました。私は今日のみ。母は明日のみの予定。だから(hanamiは)もう行かんでいいよと母が言っている

妻:そうなん?香典は?

姉:hanamiの名前で明日(月曜)母が出すはず

 

 

この時点で、僕の通夜出席は消えていた。しかし3分後再び姉からLINEが。

 

 

姉:お通夜は、やはりお母さんを連れて参列お願いします。hanamiが無理そうなら、お願いできる?(←妻に頼んでいる)

 

 

その1分後再び姉からLINEが。

 

 

姉:なんか状況が秒で変化している。行くか行かんかどうするのか分からん

 

 

 来た来た。こういうのがあるから更に嫌な気持ちになってしまうのだ。何故かは分からないが、骨肉の争いということだろう。でもこの時の僕は、肉体的にへとへとだったので、もうLINEは見なかった。とにかく行くなら行く、行かないなら行かないとハッキリしてほしかった。

 

 そして月曜日になった。昨夜熱は上がったが、起きたら大丈夫そうだった。午前11時に姉が車を持ってきた。「トシエねえちゃん」(僕の叔母さん)が、姉を駅まで送ってくれることになっていた。「ほんならお通夜よろしくー」と言い残して。トシエねえちゃんは、「ショウヘイ(息子)、行かんのやって」と言っていた。

 

「ほんならお通夜よろしくー」「ショウヘイ行かんのやって」??

かすかな疑問を感じながら僕はスルーしていた(←大事ポイント③)。

 

 

さて、意を決した僕はワイシャツを買いに行った。途中で「靴は?大丈夫・・・じゃないよな」と思い、靴も買った。「おい、まさかと思うがネクタイの結び方は・・・できた・・・」と、一応僕なりに通夜の準備をして、その時を待った。

 

 

そして、妻と実家に向かった。そこで妻は「でもなんで『サイエン』(北陸で展開している葬儀会社)でやるんけ?あの家(←母屋)は、『紫雲閣』の方じゃなかったっけ?」と言った。僕は「そう言えばそうやな。場所も近いしな」と返した」(←もう嫌になるけどここも大事④)

 

 

そして母を乗せ葬儀場に向かった。途中で母は、後部座席から何か言うが、耳が悪いので必然的に僕が大声を出すことになる。大声が嫌いな妻の表情がどんどん曇ってくる。そして母が言った。

 

 「北國新聞には、『お悔やみ欄』に出しとるのに、中日新聞には出しとらんのやって。一体マサエはどういうつもりなんかんねー」

 

 この何気ない母の一言に僕と妻は黙って顔を見合わせた。マサエ?マサエって母方の人なんやけど。今日は父方の叔母じゃなかったっけ?

 

 と思ったのは数秒だった。次の瞬間2人は全てを悟った。勘違いしていたことを。亡くなったのは、父方の叔母さんではなく、母方の叔母さんであったことを。

 

 ドキドキが治まらない状態で葬儀場に着いた。家族葬はどこでやるか分からなかったので、警備の人に聞いたが危ないところだった。ついさっきまで違う名字で考えていたからね。

 

 そして無事会場に入り、マサエさんが出迎えてくれた。良かった。直前に知ることができて。トシエねえちゃんが、息子であるショウヘイが来ないことを嘆いていたのも納得だ(大事ポイント③が解決)。

 

 母方なら「サイエン」でやるのも納得だ。ここしかないもんね(大事ポイント④も解決)。神妙にお参りをしてお焼香をしてから、僕と妻は話し合った。一体どこから間違っていたのかと。

 

 妻「私、お墓参りに行った時に確か墓石にもう(父方の叔母さんの)書いてあるの見たって言ったよね?不思議だなあって思ってたんだけど・・・」(大事ポイント②が解決。僕はこの発言をスルーしていたことになる)

 

 大事ポイント②③④は解決した。だから問題は①である。僕は何故妻にあんなふうに言ったのか?。どうやら僕は「叔母さんが亡くなった」と聞いて、反射的に「父方の叔母さんが亡くなった」と思ったようだ。だから妻がきょとんと「えっ?」と返した時に「母屋の」と姉から言われていない言葉を付け加えたのだろう。何故か?それが分からないんだよねー。

 

 僕「だって2人で(父方の)叔母さんの線香あげに行ったよな?」

妻「そうそう。結構話し込んだよね。健康のこととか」

僕「ふぅー・・・」(ため息しかでない)

妻「お姉ちゃんには・・・言えんよね」

僕「言わんといて」

妻「でも、こんな話誰かに聞いてもらいたいわ」

 

 

そういうわけで、今日記事を書いている。

 

 

それにしても、葬儀場に行く直前の母の言葉がなかったらどうなっていたか・・・。僕の早とちりはよくあることだと自覚しているが、今の母の状態に完全に負けたことになる。散々親戚の悪口を書いてきたバチが当たったというのは、冗談でなく本当のことかもしれない。

 

 

こんなくだらない話にお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

しつこいけど、豆知識みたいなことを書留めておこう。僕が住んでいる地域のほとんどは、一向宗と言っていい。南無阿弥陀仏のところである。一向宗の葬式って、最初に下のような本を渡される(正信偈という)。そして途中で、参列者がお坊さんと一緒に独特の抑揚をつけて唱和するのだ。父方は臨済宗なのでそんなことはしない。僕が唱和する姿を見たのは、働き出してからだった。そのあまりに異様な光景に驚いたものだ。「なんか変な新興宗教か?」と思ったくらいだ。

 

正信偈は、「しょうしんげ」と読む。

 

ふりがなも点いているので誰でも読める。

 

 

それ以来、何度もこの唱和する姿を見ている。しかし一緒に唱和したことはない。別に信じてないし。とは言え、もっと大人になったらその場に合わせることになるのかなあと思っていた。でも昨日も一切唱和しようという気持ちにはならなかった。唱和の声を聞いていると、メインは僕よりもお年寄りの人だったが、年下の人もちゃんと声を上げて読んでいたようだ。ちゃんとした大人はちゃんと唱和するのだな。

 

 

 

それでは。