「埋もれている名盤を掘り起こせ」その2

このシリーズは一体いつまで続けることができるのかを考えてみた。つまり、どんなレコードを選ぶことになるのか?ということである。

 

 

 

うーん・・・と1分ほど考えた結果はこれである。「名盤なのにこれからレコードとして再リリースされない可能性が高い作品」である。これなら何枚か思い浮かぶ作品がある。今日はその1枚を紹介しよう。

 

 

 

鮎川誠の「クール・ソロ」(1981)である。知ってる?鮎川誠と言えば知っているという人は多いかもしれない。もしかしたらシーナ&ザ・ロケッツという名前の方が有名かもしれない。

 

 

 

鮎川誠については、何回か記事にした。彼が亡くなったのは2023年1月のことだった。その頃多くのミュージシャンが亡くなる事態が続いていた。あれから3年。今日はバシッと鮎川とこのアルバムについて書いてみたい。

 

 

 

鮎川誠は、1948年生まれ、福岡で生まれた。アメリカ人とのハーフである。九州大学在籍時の1970年に柴山俊之らとサンハウスを結成する。1975年にメジャー・デビューを果たし、リード・ギター兼ソングライター兼作曲家として「菊(キク)」こと柴山俊之とともにバンドの顔となる。サンハウスは・・・と書くと長くなりそうだから、できれば後で書こう。

 

 

 

その後シーナと出会い、結婚を経て上京し、シーナ・&ザ・ロケッツを結成する。そして1979年に「真空パック」でデビューする。シングル「ユー・メイ・ドリーム」がヒットする。1981年にサードアルバム「ピンナップ・ベイビー・ブルース」を発表。このアルバムの発売を記念して行われた日比谷野音ライブから鮎川のヴォーカルのみを収録したのが、「クール・ソロ」である。全9曲収録である。

 

 

 

僕は、シーナ&ザ・ロケッツというよりも鮎川誠のファンだったからこのアルバムがリリースされると知った時から心待ちにしていた。発売日にはレコード屋さんで購入したはずである。

 

 

 

まずはジャケットに少しビビった。サングラスはいいとして、オールバックにキメ、素肌に黒いジャケットを着ている。そしてこちらを指差す不敵なジャケット。帯にはタイトルとともに「百万人のロックンロール」「実況録音盤」と書いてある。僕は鮎川なのに少しダサいかなって思った。しかしレコード針を落として聴くとそこにはまさに「実況録音盤」と表現したくなるような音が鳴っていた。

 



ハッキリ覚えているのは、僕はまずは彼のルックスに参っていたということだ。かっちょいいーじゃん。次は喋りだ。九州弁丸出しの朴訥な喋りは、なんかロックっぽくなくてこれまたかっちょいいーって思った。そして定かには覚えていないが、僕は鮎川誠のヴォーカルに痺れていたんだと思う。

 

 

 

このレコードでは存分に彼のヴォーカルを聴くことができる。それが一番の楽しみだった。ところが、聴いた瞬間に僕をとらえたのは、轟音ギターだった。「なんてかっこいいんだろう」。ルックス、喋り、ヴォーカル、ギター。全てがかっこいいとしか言えない。

 

 

 

最初にガッツリ書くぞ、と決意した割には貧しい言葉遣いだ。しかし、鮎川に関して言うと、このアルバムに関して言うと、もう言葉が出てこないんだよね。これがロックってもんだよ。このギターを聴いて、ヴォーカルを聴いて何も思わないのなら、僕は君と友達にはなりたくない。そんな感じなのだ。だからちょっと聴いてみてよ。B面1曲目の「ビールス・カプセル」だよ。

 


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どう?最初のギターから言葉を失うほどかっこよくない?そこからの「おれのこわれた蛇口から ふき出る不純な飲料水・・・」って歌い出すのを聴くと、もう・・・言葉を失う。歌詞が聞き取りやすいのも素敵だ。

 

 

 

内田裕也が「ロックンロール!」って言うのとは明らかに違うって書けば少しは伝わるかな?1970年代から1980年代初頭にかけて「ロックってどんなんだ?」と誰かから訊かれたら、「これだよ」と言って聴かせるのに一番適しているアルバムだと僕は思っている。これは今訊かれても答えは同じだ。これぞロックなのだ。

 

 

 

この「ビールス・カプセル」はサンハウス時代の曲である。つまり、歌詞は柴山俊之が書いたものだ。有名な「レモンティー」もそうだが、柴山は性的なニュアンスが漂う歌詞をいくつか書いている。1970年代にこういう性的且つタイムレスな歌詞を書いたっていう意味で、彼は偉大な作詞家だと言える。でもね、柴山も鮎川も歌い方に性的なニュアンスは感じられないんだよね。そこがまたかっこいいポイントでもある。

 

 

 

もし興味を持っていただけたなら、A面4曲目の「どぶねずみ」も聴いてほしい。これは、ボ・ディドリー風のリズムっていうの?ストレートな8ビートでガンガンやったるわいみたいな曲じゃないんだけど、聴けば聴くほど味が出る、そういう曲だと思うな。でも残念ながらYouTubeには転がっていなかった。下のやつは、ウィルコ・ジョンソンと組んだ時のヴァージョンである。これもいいんだけど、やはり「クール・ソロ」ヴァージョンの方が圧倒的にいい。

 

 


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やっぱりロックンロールな曲が所望なら、B面ラストの「ぶちこわせ」でぶっ飛んでいただきたい。こちらも歌詞は柴山が手がけている。

 


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“バクダンかかえて潜航中 俺は荒くれ航海士”

“ヤバイ事などまきちらし 探し出してはぶちこわす”

“一本きりの綱渡り ここは地の果て地獄の手前”

“危険承知の荒療治 命いらぬ奴はついてきな”

 

 

“世間知らずの箱入り娘 それに教育ママさんも”

“俺の腰には気をつけろ 魚雷があんたをねらってる”

 

 

 

レコードからCDの天下になった時に「CDで発売されないかなー」と思っていたが、だいぶ後になってリリースされた。だからもしかしたら世間はこのアルバムをそんなに高く評価していないのかもしれない。

 

 

 

シーナ&ザ・ロケッツは、2015年にシーナが亡くなった(61歳没)あとも活動を続ける。そして8年後に鮎川も亡くなった。74歳だった。

 

 

 

鮎川誠あるいは「クール・ソロ」について調べてみたが、あんまりひっかかってはこなかった。しかし鮎川は名言を残している。「群れるのはロック的ではない」。さすがである。ロックの本質を突いた言葉だ。でも鮎川は、一人でとんがっていたわけでは決してなく、いろんな人と友好的に関わっていた。

 

 

 

もうひとつエピソードを紹介しておこう。甲本ヒロトの発言である。もうサクッと引用しちゃうね。

 

 

 

“ずーっと僕はね、僕に先輩なんかおるもんか!っていう態度であったし、心持ちもそんな感じで生意気にやってきたけど、「あ、先輩おったわ!鮎川さんとか、その大きな一人だわ」って。「一生かかっても恩返しできたらするわ」って言ったんですよ”

 

 

インタビュアーは、「そんな鮎川さんもいなくなってしまったんですけど」と言った。そしたらヒロトがこう返すんだよね。

 

 

“そうだね。いや、あの~、いなくなったことはどうでもいい。そんな大したことじゃない。いたってことがすごいんだよ。いたってことに比べたら、いなくなったことは大したことないよ”

 

 

 

名言、名歌詞製造機のヒロトは、ここにまた名言を残していたのだ。

 

 

 

 

そんなこんなで鮎川誠のことを考えていたら、もうすぐ16時である。まだ他にも書きたいことはあったはずなんだがなあ。

 

 

 

今日は朝から開放感一杯だった。思いっきり一人になれたからである。やはりまだ4月からの新しい生活リズムには慣れていない。

 

 

 

 

夕食の用意をせねば。

 

 

 

 

それでは。