成田悠輔がこんなことを言っていた。
「我慢せずにすぐ辞める若者っていうのは、むしろ本来社会にとってはチャンスなんじゃないか」
「我慢せずにすぐに辞める若者が増えるっていうのは、ほぼしょうがないんじゃないか。そもそも僕たちは結構豊かで別に頑張らなくったってそこそこ快適じゃないですか。その上日本だと子どもの数が減って売り手市場で人手不足で、職にあぶれることはなかなかない状態ですよね」
「だから頑張らずに辞めちゃうってむしろ自然だと思うんですよ。普通に考えると、だから最近の若者はってなりがちになると思うんですね。今日の議論も説教臭いおじさんっぽい視点に偏っていると思うんですよ」
「でもチャンスであるっていう可能性も同時にあると思うんですよ。ここで思い浮かぶのがスポーツ選手なんですよ」
「日本人の若いスポーツ選手とかアスリートの最近の活躍の仕方って異様じゃないですか。野球とかサッカーだけじゃなくて、バスケット(NBA)でもマイナースポーツでもオリンピックでメダルを獲りまくってるじゃないですか。あれ、不思議ですよね。日本人の若者が無茶苦茶減っていって世界の人口が増えてるじゃないですか」
「あれなんだろう?って色々な業界のスポーツ選手に聞いたんですよ。そしたら全員同じこと言うんですよ。子どもの数が減ってみんな辛抱強くなくなったからこうなったんだって」
「昔は、子どもが無尽蔵にいたから数撃ちゃ当たるスパルタ作戦で、訳の分からないうさぎ跳びとかやらされてもみんなついてきた。それがそうじゃなくなっちゃった。競技間でも数の少ない子どもを競い合わなきゃいけない、やるかやらないかでもちゃんと彼らを惹きつけなくちゃいけない。そうすると、みんな辛抱ができなくて最低限の労力で最大限の効果を上げなきゃいけないし、何故これをやらされるのかって納得できないとすぐ辞めちゃう」
「その結果スポーツ界側が激変して、トレーニングとか訓練とか全てが急激に合理化して科学化したんだ、それが今の世代の活躍の原因じゃないかって言うんですよ」
「今、大活躍している世代がみんなゆとり教育世代なんだって言うんですよ。だから取り敢えず詰め込む、みたいなのと真逆のメンタリティを持ったために今の無双状態がある」
「実はこれっぽいことを日本社会全体に広げられる可能性があるんじゃないか。だから我慢せずにすぐ辞めてしまう若者が増えているからこそ、それを高賃金に繋げたり経済成長に繋げたりする可能性っていうのがあるんじゃないか」
「だから、まず説教をやめるってことじゃないですか?」
スポーツ界で若い人たちが活躍していることについては、僕も「なんか日本人、凄いな」くらいには思っていた。しかし、選手の間からこういうハッキリとした意見が出てくるとは思わなかった。成田悠輔氏のような考え方は、他の業種にも(既に)取り入れられていると思う。
僕は教育界のことしか知らない。しかももう退職しているので、現在の状況は分かっていないのかもしれない。しかし、一昨日書いたような「(児童を)ルールでがんじがらめにする」ことは、不合理この上ないと言える。とは言え、僕自身は、時々(若者に対して)説教臭く記事を書いているのも事実だ。だから偉そうなことは言えないが、学校は、教育活動のひとつひとつに「なぜこのようなことをしているのか」を児童に分かるように、納得できるように説明することが急務だと思った。
というわけで「若者に涙する」である。一昨日、昨日で一気に読んだ本が「コズミック・ガール」である。「宙わたる教室」の続編で、出版されるのは知っていたが、たまたま書店に行った時に見つけたので迷わず買った。

まずは「宙わたる教室」のことを少し書かねばなるまい(以前書いたが、もういっぺん書こう)。本は2023年に出版され、2024年にドラマが放送された。
“東京・新宿にある定時制高校。そこにはさまざまな事情を抱えた生徒たちが通っていた”
“負のスパイラルから抜け出せない不良の柳田岳人。授業についていくことを諦めかけたフィリピン人の母と日本人の父を持つ越川アンジェラ。起立性調節障害を抱え、保健室登校を続ける名取佳純。青年時代、高校に通えず働くしかなかった長嶺省造”
“年齢もバックグラウンドもバラバラな彼らの元に、謎めいた理科教師の藤竹が赴任してくる。藤竹の導きにより、彼らは教室に「火星のクレーター」を再現する実験で学会発表を目指すが・・・”
僕は、ドラマを先に観て、感動のあまり本にも手を出してみた。そしたらこれまた素晴らしい作品で、その後作者の伊予原新の本を読み漁ることになった。ドラマの方も何回も観た。特に最終回で柳田が学会で聴衆に話す場面は何回観ても涙が出た。
そんな「宙わたる教室」の続編なのだ。楽しみしかない。一昨日は、午後遅くから読み始めたので、途中で止めざるを得なかった。昨日は、ドジャースの試合を見てからブログを少し書き、読み始めた。残り3分の2くらいだったが、休みなく一気に読み終えた。
そしたら途中で何度もティッシュで涙と鼻水を拭う事態になった。登場人物(の言動)があまりにも熱くて感動しちゃったからだ。
今作も、前作同様新宿の定時制高校が舞台である。かつての科学部はなくなっていた。そしてさまざまな事情を抱えた高校生が登場する。前作と違うのは彼らの年齢層だ。全員が十代後半の若者である。
「飯星佐那」・・・勉強に勉強を重ね、名門中学・高校に入学したが、親友の自殺をきっかけに「このままではダメになる」と感じ、定時制高校に編入。しかしホントは「火星のクレーター再現」の発表に魅せられ、カール・セーガンを師と崇め科学部を立ち上げようと奮闘する。物語の主人公。
「みちる」・・・音楽を生き甲斐とし、授業中はいつもヘッドフォンで音楽を聴いている。佐那のことが気になり、突っ走りがちな佐那をフォローする。最初っから「自分は科学部ではない」と言い張っていたが・・・。
「理(おさむ)」・・・少年時代にリンパ腫になる。再々発に怯えながらも日々を丁寧に生きている。休学しているので、みんなより2つ年上。科学部に入ってからは、精神的なリーダーとしてみんなを支えるが・・・。
「宇辰(ユーチェン)」・・・中国籍だということで、小学校時代から妹とともに酷いいじめを受け続ける。だから日本社会に不信感しかないので、もう少しで詐欺行為に手を貸そうとするところまでいくが・・・。
「翔太」・・・父(なかなかのダメっぷりだが、途中で改心する)と2人暮らし。服装も貧相で学力も低いが、「ピタゴラ装置」に夢中である。手先は超起用で、科学実験に目を輝かせるいい奴。彼の何気なく口にしたアイディアがきっかけで・・・。
この5人が科学部のメンバーである。加えて「やる気ねーなー」と思いつつ仕事をしているが徐々に科学部にのめり込んでいく女教師、科学部のことを何かと支援してくれる謎の副校長が絡んでくる。
そして・・・。読者全員が望んでいた「宙わたる教室」の科学部メンバーも登場するのだ。しかもいい形で現メンバーに絡んでくるから、堪らなく嬉しい。となるとやっぱり、前作の藤竹先生の登場も期待してしまうが・・・これは書かないでおこう。
今回の研究は、「廃棄食材由来の燃料でペットボトル製ハイブリッド・ロケットを打ち上げる」である。これでコンテストの上位入賞、そしてアメリカ行きを狙うのだ。
前作との違いは、先ほど書いたメンバーが同世代だということが挙げられる。そして素晴らしいのは彼らだけで何とか前に進もうとする姿勢だ。藤竹のように直接示唆を与えてくれるような存在もいない(佐那が勝手に動いて愛媛の大学教授にアドバイスを仰いだり、宇辰が勝手に元JAXAの人と話し合ったりするが)。ちょっとくらいへこむことがあっても、すぐにポジティブな方向に動き出す。
作品の中でもこう書かれている。
「この子たち、わたしたちの代とはだいぶ違うよね」佳純が言う。「もっと陽性っていうか、軽やかっていうか」
それにしたたかで、たくましいのだろう。藤竹のような存在なしに、あんなに面白くレベルの高い研究に挑もうとしているのだから。
彼らだけの力では難しい。―そう思っていたのは自分だけで、部員たちは初めから、誰かに導いてもらおうなどとは考えていなかった。大人たちを巻き込みながら、彼ら自身で決めた道を進もうとしていた。そのことに気づいて頬を張られたような気持になった。喧嘩別れしたときに長嶺に言われたことも、その通りだと思った。俺も、今の境遇をただ拗ねてる場合じゃねえー”
佳純の発言以降は、柳田の独白だ。彼は大学に進学し、そのまま大学院に進みたいと思っていたが、障害が立ちはだかりくさっていた。現科学部は、旧科学部の部長だった柳田の心をも動かしたのだ。
そんな心震える場面が連続するので、僕にはティッシュが必要だったのだ。最後は駆け足で終わったのが不満でもあったが爽やかな気分になった。きっと読者は「この話をまたドラマ化してほしい」と思ったことだろう。でもそうなると登場人物が多すぎて大変なことになる。ここはひとつNHKドラマ制作部に頑張ってもらいたい。
最初の成田悠輔氏の発言、そして「コズミック・ガール」の面々。大人はもっともっとしっかりしなきゃいけない、考え抜かなきゃいけないと思った。
最後にこれだけは書いておかなきゃね。遂にストーンズのニューアルバムが発表されるね。それについては今度書くことにしよう。
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それでは。