いとうせいこうが語るボブ・マーリー

昨日は僕が楽しみにしているピーター・バラカンの「未来へのプレイリスト」が放映されたので、今朝起きてから早速観た。ボブ・マーリー(1945―1981)登場でゲストはいとうせいこうである。これは注目だ。作家ならではの言葉を聞きたいと思った。

 

 

 

ざっと観て思ったことは、ボブは自分の住んでいるトレンチタウンを見ながらも同時に世界を見て歌っていたんだんだなということである。だからこそその歌が普遍性を持ち、今でも世界中で聴かれているし、歌い継がれているのだろう。加えて声が神懸っている。昔読んだ本に「CIAが世の中を扇動するヴォーカリストの声を分析している」としてジョン・レノン、ジム・モリソン、あと誰だっけ?まあそんな記事を読んだことがある。そこにボブ・マーリーも入っていた。その時は「なんで?」と思ったが、今では納得だ。

 

 

 

そんなボブ・マーリーを「偉大なミュージシャンであり、偉大な活動家」「僕にとってはボブ先生」と言ったいとうせいこうは、早い時期にボブに魅了されたそうだ。深夜番組で初めて「ノー・ウーマン・ノー・クライ」を聴いた時、歌詞も分からないのに涙が出たそうだ。そして親に頼んで買ってもらったのが「LIVE!」(1975)だったという。当然のことだが、今はボブの歌詞をちゃんと読み込んでいてそれについても言及(「誰にでも分かる言葉を遣っている」)するし、ピーターも「シンプルだけど、深い。あれは真似しようがない」と語っていた。

 

 

 

そして何と言ってもいとうせいこうはガザへ行って「国境なき医師団」にもぐり込んで取材をしているのだ。彼もまた世界を見ているのだ。ボブ・マーリーのことを「ボブ先生」と言う彼は、その教え通りに行動している。ガザでの現状を見て悔しい思いでタックシーに乗っている時に運転手がかけた「ゲット・アップ・スタンド・アップ」で盛り上がり乗員みんなで大合唱した(「自分たちの気持ちが本当に委ねられる歌詞だった」)という話を聞いて「世界を見ながら発信し続けるいとうの言葉にはこれからも注目していかなければいけない」と改めて思った。

 

 

 

だからと言っては何だが、日本国内であーだこーだ言っているのってダサいよなと思った。それに対して文句を言っている自分もダサい。トレンチタウンで育ち、世界を見ながら歌ったボブと日本という村の中でギャアギャア言ってる日本国民との差はとてつもなく大きい。だからこそいとうせいこうの存在は大きい。前にも書いたが、いとうは素直に「見てみたい」と思い、それを実行する。そこに邪な考えは一切ない。

 

 

 

 

 

「ノー・ウーマン・ノー・クライ」

 

 

“女よ もう泣かなくてもいい”

“覚えてるかい 一緒に座っていたよね トレンチタウンの共同住宅で”

“偽善者たちを見つめていた 善良な知り合いと交わっているのを”

“いい友達もいたしいい友達を失ったこともあったね”

“過ぎていく日々の中で すばらしい未来でも過去を忘れないで”

“だから涙を拭いてよ だから女よ もう泣かなくていい”

“すべてうまく”

 


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「トレンチタウン」は、ジャマイカのキングストンにあるスラム街(要するに貧しくて治安の悪いところ)だ。「エブリシング・イズ・ゴナ・ビー・オールライト」と延々と歌うボブの声を聴いていると勇気づけられる。「不思議な英語と言えばそうなんですけど、かえって英語圏じゃない子供にとって逆によく分かる」「アフリカでも中東でもヨーロッパでも、みんなが自分のトレンチタウンと結び付けて分かっていく」といとうは語っていた。

 

 

 

ピーターは「貧しかったり弾圧されたりするような世界中の人たち、声を持たないそういう人たち、彼らを代弁するような存在でした」と言うと「だから聖なる人にも見えました」「自分の人生にとっても『エブリシング・イズ・ゴナ・ビー・オールライト』っていう一言が自分を支えたことは何度もあって、それは政治のことだけじゃないですですよね。説得力っていうか」といとうは熱く語っていた。

 

 

 

 

「ゲット・アップ・スタンド・アップ」

 

 

“立ち上がれ 自らの権利を訴えるんだ 立ち上がれ 戦いをあきらめるな”

“牧師さん 天国は死んだ後にあるとか言うなよ”

“わかってないみたいだな 命の本当の価値を”

“輝くものがすべて黄金じゃない まだ語られていないことがいっぱいある”

“だから光がもし見えたら(君はどうするんだ) 自らの権利をちゃんと主張するんだ”

 


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この曲は、ハイチを訪れたボブが、悲惨な貧困状態を目の当たりにし、それがきっかけで生まれた曲だそうだ。貧困、人種差別、弾圧などと闘う人々を勇気づける名曲である。

 

 

 

ボブは、ジャマイカでの政党間の抗争に巻き込まれ、銃撃されて、ジャマイカから逃れざるを得なくなる。しかし再びジャマイカに戻りフリーコンサートに参加。その時にいがみ合っていた政党の党首同士をステージに上げ、3万人の前で握手させている。ピーターは「ああいうことをできたのはボブ・マーリーしかいないんじゃないか」と言い、いとうは「1回撃たれていて何が起こるか分からないところに敢えて出て行って、握手させる。胆力というか度胸のある人で、偉人だなと思う」と語っている。

 

 

 

とにかくピーターが提示する話題に対して、しっかり受け止めて自分の言葉で話すいとうは、カッコよかったし凄みを感じた。

 

 

 

 

 

いとうせいこうと同じように世界を見て発言している人がいる。ソウルフラワー・ユニオンの中川敬である。中川の言葉も世界を見た上で発したものだし、歌詞は直接的な言葉を遣うことも多い。ミュージック・マガジンで特集記事が組まれていたので、近いうちに記事にしてみたいと思っている。

 

 

 

 

 

 

最後にこれだけは書いておこう。今日5月2日は忌野清志郎の命日だ。2009年だった。もう17年も経ったんだな。この年から僕の闘病生活が本格的に始まった。そして今年の10月に彼のデビュー55周年記念ドキュメンタリー映画が公開される。タイトルは「愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた」である。この作品は、僕の家の近くのイオンシネマでもきっと上映されるはずである。楽しみである。

 

 

 

 

 

さてと。これからシャワーをしてリビングの最終チェックをして、かぼちゃサラダを作って古い同僚をもてなす準備をしよう。

 

 

 

 

それでは。