僕のデヴィッド・ボウイ歴は、「ロジャー(間借人)」(1979)をリアルタイムで聴くことから始まり、そこから遡って諸作品を聴くという流れだった。
そんで彼の作品をランキング付けしたり、諸作品についての感想を書いたりしていた。しかし、作品をコンプリートしたうえでランキング付けをしていたわけではないんだよね。あんなに彼についての記事を書いているくせに聴いたことがない作品があるんですよ。
それはいかんだろ、死ぬまでには是非聴いておかなきゃという気持ちがムクムクと湧き上がり、手に取ってみた。それが「世界を売った男」(1970)である。つまり僕は「ハンキー・ドリー」(1971)からのボウイを知っているだけだったのだ。

僕が「世界を売った男」を敬遠していたのには一応理由がある。「ジギー・スターダスト・ザ・モーション・ピクチャー」(1983)というライヴ盤が発表された時に聴いた「円軌道の幅」がどうにも馴染めなかったのだ。他の曲は、僕のイメージ通りのボウイだった。しかし「『円軌道の幅』が入っているアルバムかぁ・・・じゃあ聴かなくてもいいかな」と思った僕は「世界を売った男」を長らく放置していた。
そうこうするうちに、ニルヴァーナがタイトル曲のカヴァーを発表したことを知ったが僕は「ふうん」と思っただけで、聴こうともしなかった。
タイトル曲を初めて聴いたのは、恥ずかしながらボウイの死後だった。「changesarebowie」というスタジオライヴアルバムで、この曲のアコースティックヴァージョンを聴いて、「うわあ、いい曲じゃん」と驚いた。
腰の重い僕はそれでも、アルバム全部を聴こうとはしなかった。これはもう、縁みたいな話になるのかもしれない。みんなも聴こう聴こうと思いつつそれが実現したのはだいぶ後のことだったってこと、あるでしょ?
そういうわけで、遂に僕は1970年発表の「世界を売った男」全9曲を聴いた。昨日のことだ。
聴いてまず思ったことは、「ミック・ロンソン、ギター弾きまくってんなー」だった。1970年と言えば、レッド・ツェッペリンやジェフ・ベック・グループやクリームが、つまりジミー・ペイジやジェフ・ベックやエリック・クラプトンが幅を利かせていた頃だ。ボウイも当然彼らのことは知っていたと思うし、ミック・ロンソンにそれを期待したのかなって思っちゃった。
「ミック、君の思うようにガンガン弾いてみてよ」とボウイに言われ、ミックも「そう?じゃあやっちゃうよ」って感じだったのかなあ。まだまだ聴かなきゃいけないんだろうけど、馴染むのに時間がかかりそうな気がする。なんか次作「ハンキー・ドリー」のようなメロディのきらめきが感じられないのだ。
こういう時は何かに頼るに限る。確か家にボウイ本があったはずだと思い探したらすぐに見つけ出すことができた。ネットもいいが、本もいい。さて調べてみるか。

まずミック・ロンソンについて興味深い話が書いてあった。
~出会ってすぐに意気投合した2人は、2日後に「ジョン・ピール・ラジオ・ショー」のセッションで、ボウイの新曲「円軌道の幅」をプレイする。ロンソンのヒーローは、ジェフ・ベックとエリック・クラプトンで、ロック・バンド、クリームの熱心なファンだった~
ビンゴ!僕の予想が当たったぜ。そうかそうか、ミック・ロンソンはベックやクラプトンのファンだったんだね。
その後、プロデューサー兼ベースのトニー・ヴィスコンティの(売れるための)戦略を変えてはという提案をボウイは受け入れ、バンドを作る。それが後々のスパイダー・フロム・ザ・マースに繋がるようだ。
ロンソンはこうも言っている。
“僕たちはボウイが何かを持っているのは分かっていたけど、それが何なのかはよく分からなかった”
なるほど。いくら「スペース・オディティ」が小ヒットしても、まだまだ何者にもなっていなかったってわけか。でも、思いっ切り可能性は感じてたってことか。メロディのきらめきが今一つに感じるのは自然なことなのかもしれない。
ボウイは、「バンド作ろうぜ!」と盛り上がってはいたけれど、実際のレコーディングは大変だったらしい。主にボウイの私生活のだらしなさ(ドラッグとか色々)が原因みたいに書かれている。ボウイ自身は、1976年にこの作品のことを次のように語っている。
“悪夢だったね。作る過程はひどいもんだった。それまであんなプロフェッショナルにアルバムを作ったことがなかったから、どうしようかと思ったよ。当時は4トラックを使ってやりたいと思っていたのに、結果は仰々しいものになった”
ここまで書きながら、ずっとこのアルバムを聴いているが、聴けば聴くほど馴染んでくる(当然か)。大仰だと思った「円軌道の幅」もいい感じで受け入れることが出来つつある。ボウイが言うほど悪夢でもないと思うぞ。モリッシーもこのアルバムをお気に入りの1枚に挙げているみたいだし。
僕のお気に入りのタイトル曲はB面の最後から2曲目に配置されている。だからB面を聴く回数が午前中多かったが、いやいやA面も1曲目から4曲目までいい感じで並んでいるじゃないかと今(16時)は思い始めている。いやー、ボウイを新鮮に聴くことができるなんて、幸せだよ。死ぬまでに聴いてよかったよかった。
調べてみたらこのレコードは、1973年にビクターで発売された見本盤だった。でもいい音鳴らしてるよ。ミックのギターもそうだけど、トニー・ヴィスコンティのベースがまたブリブリ鳴ってるんだ。53年前の骨董品を侮るべからず、である。
今日は、13時前に家を出て市役所に向かった。期日前投票をするためだ。しかし駐車場は満車で一旦諦めた。近くのオムライスで有名な喫茶店でオムライスを食べて再び駐車場に行くと辛うじて1台分空いていたので、ブーンと停め、投票をしてきたよ。駐車場が満車なのも分かるほど投票に来ている人がたくさんいた。


この前の参院選よりも期日前投票の割合が低いと報道されていたけれど、いやいやそんなことないんじゃない?って思った。少なくとも我が町では選挙は盛り上がっているようだ。
それでは。
最後に書くのも何なんだけど、「世界を売った男」の曲のメロディの今一つ感が段々気持ちよくなってきた。これはこれでアリである。