ねえ、Grace Bowersって知ってる?今日はまず彼女のことを少し書いてからタイトルの話にいきたいな。
彼女は、18歳のギタリストで、ソングライターでバンドのリーダーでもある。今年のフジロックにも来てたようだ。ローリングストーン誌は「ナッシュビルの新たなギターヒーロー」と称賛している。
彼女のことを知ったのは、例によってYouTube動画で「これどうです?旦那」と紹介されたからだ。何気なく見てみると、赤いSGを持ち、ドラムとベースを従えて渋いフレーズを弾いている。その粘っこいフレーズにビビット来た僕は早速他の動画を探した。
そしたら、結構弾きまくってたんだよね。僕はどちらかというとメタメタ弾きまくっている彼女よりもバックで渋く弾いている彼女の方が好みだったけれど、これから聴き込みたい人であることは間違いない。それにしても18歳だよ18歳。でも、きっとおじさんには受けると思うなあ。
さて、タイトルに書いた「作者の指紋が残る音楽」と言ったのは、平沢進である。彼がなんと「婦人画報」に登場したので、早速購入して記事を読んでみた。脳科学者の大黒達也との対談がメインだったが、とても興味深い内容だった。題して「AIと音楽、そして人間」である。印象に残ったフレーズを写経してみよう。

編集部「・・・でもP-MODELってどちらかというと身体性のテクノだったと思うのですが、それはもう最初から意識されていたんですか?」
平沢「いや、最初からではないです。前身のプログレバンドが、一夜にして同じメンバーでP-MODELになりました。そこにドラマーがいたのですから必然的に身体的なバンドになるわけです。そういう意味で、うちらはパンクに近いテクノって言われました。できればもっと身体性のないものにしたかったんですが、成り行きでそうなった。でもソロになって、ついにステージにひとりしかいなくなった時、今度は逆に身体性を求めるようになりました。人力で発電機を回して演奏するシンセサイザーを持ち込んだりとか」
大黒「ああ、なるほど!平沢さんご自身が楽器っていうことなんですかね?」
平沢「ああ、そういう感じかもしれません。ダンスに近いんだと思います。ダンスに近いけれど踊れない。その代わり機械を使って、必然的に身体の動きを作り出す」
大黒「なんかすごく腑に落ちました」
僕も度々、平沢進について書く上で彼のコンサートにおける身体性について言及してきたつもりだが、ライブという音楽行為と身体性についてここまで平沢自身にハッキリ言われると、僕も腑に落ちた。やっぱそうだったんだ。
↑↑↑
2分20秒くらいのところから人力発電をしながら演奏をする平沢を見ることができる。
大黒「最近出てきたLLM(大規模言語モデル)について、音楽を作る側としてどのようにお考えですか?」
平沢「私は音楽を作者の指紋が残る『完成』と、単に商業的に流通可能な仕上がりの『成立』の2つに分けているのですが、後者、誰もが音楽として予測可能な範疇、ありがちな流行歌の類いのものであれば、数分で完全なものができます。ですが、誰が作ったかという指紋みたいなものがその音楽に残せるかという意味では、全然ダメでした」
大黒「言語でいう『誰がしゃべったか』による説得力みたいなもの?」
平沢「そうですね。何度か、プロンプトを変えてみて試してみましたが、結果は同じでした。より安易と思われる文章作成についても試してみたんですよ。・・・・・ひとつとして平沢風の文章は書けませんでした。文章で苦戦するなら、LLMで『完成』の音楽を作るのは、現在はまだ無理だと思いました」
とにかく平沢進は、どこまでAIで自分らしい音楽を作れるかどうかを試したはみたんだ。そんで、文章で無理なら音楽なんて無理でしょってことなんだな。取り敢えず今はってことだろうけど。
これは対談のほんの一部であるが、今、平沢がどんなことを考えているかが分かってよかった。となると、誰か平沢風な音楽を作ってくれないかな?とも思ってしまった。それを聴いて自分がどう思うのかを是非ジャッジしてみたい。
まあ、そんなこんなでこれからどんな音楽が作られていくんだろうという興味もあるが、今は最初に書いたGrace Bowersみたいな指紋のクッキリした音楽を聴いて幸せに生きていきたい。
おっと平沢進で思い出したんだけど、彼がコンサートで使うマイク(ヘッドフォンみたいに頭にかけて横からグニュって伸びてるマイク)を「これを使ったのは、平沢進が最初だ。マドンナじゃない」って書いたんだけれども間違いだった。
ついでにマイクの名前を調べたら「ヘッドマイク」って言うんだって。そのままやん。そんで誰が最初に使ったか?だけど、きっと正解はケイト・ブッシュだ。多分彼女で間違いない。1970年代後半のステージで使ってたのを今日見たからだ。「嵐が丘」(デビューアルバム収録の名曲)の動画を見て、観客も見たら思いっ切り70年代の格好をしてたから、平沢よりも早いことは確実だ。ケイト・ブッシュ恐るべしと思った次第である。
↑↑↑
2分くらいのところを見れば分かると思う。
今日はこれくらいにしておこう。今から藤原伊織の「てのひらの闇」を読まなきゃいけないんでね。
それでは。