hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

いつか、どこかで その3

ブライアン・フェリーがソロ2作目で「Another Time , Another Place」と題したように「いつの時かも分からない、ここではないどこか」というテーマに一番迫ることが出来得たのは、ロキシー・ミュージックのラストアルバム「アヴァロン」ではなかろうか、というのは万人が認めることであろう。今日は「アヴァロン」について私的な思い出も含めて書いてみよう。僕にしては大それた話題かな。

 

 

まず、ロキシー・ミュージックディスコグラフィ(スタジオ盤)を書いてみよう。

 

ロキシー・ミュージック」(1972)・・・46分

「フォー・ユア・プレジャー」(1973)・・・42分

「ストランデッド」(1973)・・・41分

「カントリー・ライフ」(1974)・・・42分

「サイレン」(1975)・・・43分

マニフェスト」(1979)・・・43分

「フレッシュ・アンド・ブラッド」(1980)・・・42分

「アヴァロン」(1982)・・・38分

 

以上である。スマートフォンをスクロールする必要のないくらい作品数は少ない(8作品)。しかしどのアルバムも名盤の誉れ高い。また1976年にライヴ盤を発表して一度解散している。もう一つ書くとメンバーチェンジが激しいバンドでラストアルバムは第8期のメンバーだということだ。

 

アルバムの時間も書いてみたが、「アヴァロン」以外はどれも40分少々だ。これはロキシー・ミュージックに限ったことではない。レコード時代は大体こんなものだった。今思うとプログレバンドはこの制約の中で戦っていたんだな(そんなことは今どうでもいい)。「アヴァロン」はその作品群の中でも最も短い38分だった。これは調べてみて驚いた。

 

1982年といえばMTV勃興期だ。ガンガンその時代の音楽がPVで流されていた(動くミュージシャンを見て僕たちは興奮したものだ)。「アヴァロン」からは冒頭の1曲目を飾る「モア・ザン・ディス」がさかんに流されていた(違ったっけ?)。

 

本アルバムの音楽について語る前に参加メンバーについても触れておこう(実は時間稼ぎをしている)。オリジナルメンバーは3人。ブライアン・フェリー(ヴォーカル、キーボード、ギター、シンセサイザー)、フィル・マンザネラ(ギター)、アンディ・マッケイ(サクソフォーン)。主なサポートメンバーは、ニール・ハバ―ト(ギター)、アラン・スペナー(ベース)、ニール・ジェイソン(ベース)、アンディ・ニューマーク(ドラム)等10人である。

 

これだけのメンバーで「Another Time , Another Place」な音楽を創り出している。

 

モチーフは「アーサー王が死後に赴いたとされる伝説の極楽島『アヴァロン』」だって。ブライアン・フェリーが今まで発表しそうで発表しなかったコンセプトアルバムといえばいいのかな。そろそろ実際に曲を聴いてもらう方がよさそうだ。1曲目の「モア・ザン・ディス」を聴いてみてください。

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この音世界が最後まで続くのだ。となるとアルバム全篇を貫くミックス作業が大きな鍵を握ることになる。ミックスはボブ・クリアマウンテンだ。数々の名盤のミックスを手掛けた名匠がなしえた最良の仕事かもしれない。

 

今まで「幻想的」で「優美」で「幽玄」とか「大人のAOR」なんていう言い方もされてきたのではないかと思われるが、まあそれはそうだろうと僕も思う。きっとエコーの多用からそんな言葉が使われるのだろうが、AORなんてそんな庶民的なもんじゃない。これはロック・ミュージックが到達したひとつの極点なのだ。ブルースっぽくもない、ロックンロールっぽくもない、プログレっぽくもない、「今まで聴いたことがない」「Another Time , Another Place」な音楽なのだ。

 

2曲目の「ザ・スペース・ビトゥイーン」のイントロを聴いていただきたい。ギターの響き、それに絡みつくベース、そしてサクソフォーン。美しいったらないぜ。

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ブライアン・フェリーが自身のヴォーカルを徹底的に対象化して突き詰めたサウンドがこれだ、という言い方もできるかもしれない。この音に合うヴォーカルって彼の他に思い浮かばないからね。

 

 

このまま聴いていたら3曲目も聴きたくなるはずである(断言)。そして3曲目のタイトル曲「アヴァロン」も名曲なのであった。女性コーラスも最高である。

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ここまで僕の罠に嵌って律儀に3曲を聴いていたら、全曲通して聴きたくなること必至だ。繰り返すが全部で38分である。これくらい一日のうちに使ったっていいじゃない。特に現実を忘れてどこか遠くの方に行きたい人にはピッタリの音楽である。

 

僕はというと、どこか遠くに行くことが怖くて「アヴァロン」を聴くのは今回本当に久しぶりのことだった。大学時代以来と言ってもいいかもしれない。だからある意味危険な音楽とも言える。

 

それにこのアルバムについてはいろいろと言いたいことがある人が多いようだ。検索してみたらたくさんの人がブログに書いていた。どうも昔からのファンにとってはツッコみどころ満載のアルバムのようだ。僕も頑張って他の人が書いていないようなことを書いてみよう。

 

じゃあいつもの推測でいってみよう。ブライアン・フェリーが「アヴァロン」のような、というか自分が追求したいというか、自分のヴォーカルが一番映えるというか、そんな音を模索し、少し具現化できたのは前作「フレッシュ・アンド・ブラッド」からではなかろうか。特に「セイム・オールド・シーン」ではないかと僕は目をつけている。うん?そうか?と思われる方もいるかもしれない。ピコピコ音もするからね。でもギターの響きなんか「アヴァロン」だろ?と思うし、ベースも躍動している。メロディもキャッチーだ。どうだろう?ちょっと聴いてみてよ。

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あともういっこ書かせてもらおう。ブライアン・フェリーは「アヴァロン」を大成功させた。その後ソロの「ボーイズ&ガールズ」もその路線でいき、これも成功させた。しかし彼は言ってみれば「アヴァロン病」に罹ってしまい、その後出すアルバム出すアルバム全部(とは言わないが)「アヴァロン臭」がするようになった。先日僕が「ブライアン・フェリーサイコー。全部おんなじに聴こえる」と書いたのはそういう意味である。決して貶めているわけではない。これこそがブライアン・フェリーが辿り着いた、そして彼にしか出せない音だからだ。

 

「アヴァロン」のベストテイクは6曲目の「ザ・メイン・シング」だと思う(←いつものようにしつこい)。

 

今は予定通りカレーを作っている最中だ。牛すじなんていう今まで使ったこののない食材に挑戦中である。どんな味になるのかな?じゃあ皆さん、よい週末を。チャオ!