一昨日、サウンドハウスからギターの注文についてのメールが来た。
~hanami様
この度はサウンドハウスをご利用頂き、誠に有難うございます。ご注文いただきました商品の、現時点での入荷予定を下記にご案内します。
入荷予定:1個 2023/09/20頃
詳細な予定が分かり次第、改めてご案内いたしますので、今しばらくお待ちくださいますようお願い申し上げます。 ~
だって。びっくりしたよ、「く、くがつぅ~って9月のことだよな?」。他のサイトにもあたってみたが、入荷未定みたいなことばっかり書いてあった。
これはもしかしてあれか?かずきのユーチューブ動画効果なのか?だとしたら恐るべし、かずきだな。スクワイア社も嬉しい悲鳴を上げているのではないだろうか。
でも9月までは待てないな、と思い、再び調べると、本家のフェンダー社に同じのがあるではないか。しか~し、値段は10万ちょいだ。僕のG&Lよりも高い。セカンドギターとしてちょうどよいかな、って思ったいたのでこれは買いではないな。
あー、でも一旦火がついたギター欲しい熱が治まらない。どうしたもんでしょう。
というわけで、「アムステルダム」である。今僕が夢中になって聴いている曲のうちのひとつだ。オリジナルはジャック・ブレル。それをスコット・ウォーカーがカヴァーし、おそらくそれを聴いてデヴィッド・ボウイがカヴァーした。僕が聴いた順番はこれとまるっきり逆である。ボウイ→スコット→ジャックとなる。どれも甲乙つけがたいほどの素晴らしい歌いっぷりだ。
このバケモノみたいな曲は以下のようにしてショウで発表された(見てきたかのように書くがもちろん調べて書いた)。
~1964年10月のオランピアの劇場公演の直前までジャックは迷っていた。この曲は歌っていいのだろうか?もし客にうけなかったらどうする?彼はフランスシャンソン界のスーパースターだ。失敗は許されない。1月に録音した新曲「ボンボン」「マティルド」は上手くいった。その後に作った「アムステルダム」はイングランド民謡の「グリーンスリーヴス」の影響下にあることは明白だ。客はもちろんそのことに気づくだろう。それでも受け入れられるんだろうか?きっとそんなことを悩んでいたのだろう。
スタッフからは確かに「この曲を今度のショウで歌わないなんてあり得ない」と言われていた。そこで今回の公演で3曲目に歌うことに彼は同意したのだが、実はまだ決心できていないようだ。今日の客は2000人、満員である。
悩んでいる風なジャックの傍に行く。俺は彼専属のアコーディオン奏者で、同い年であるから普段から近寄りがたいオーラを発しているジャックにでも割と気安く話しかけている。
「あの曲、やるかどうか迷ってるのかい?」
「ああ。でもやるよ」
「無理しなくていいよ、ジャック。君がやりたけりゃやる。嫌ならやらない。簡単なことさ」
「ジャン、・・・」
ジャックは何か言いかけた。俺は彼をじっと見つめていた。しかし彼の口から発せられた言葉は、
「『アムステルダム』はやるよ。決めたように3曲目だ」
という言葉だけだった。俺は、ふとした拍子に何か言いたげな表情になるジャックのことが最近気になっていたが、今は公演直前である。気合を入れ直さなきゃいけない。
ショウの幕が開いた。ジャックはいつものようにジャック・ブレルだった。素晴らしい。そして3曲目になった。彼がこちらをチラッと見る。俺は肯いてアコーディオンを弾き出すとすぐに彼が歌い出した。
信じられない3分間だった。今まで何度も彼の歌に打ちのめされた。何度もだ。しかし今度という今度は参った。そして俺よりも驚いているのは観客だった。それがよく伝わってきた。何しろ誰もがジャックにくぎ付けなのだ。喋るものは一人もいない。呆然とした表情の客も沢山いた。ほら見てみろ、ジャック、みんな「アムステルダム」に打ちのめされているぞ。当のジャックはいつものことだが、集中して歌っているので今の状況に気づいていないようだ。彼の歌いっぷりがどんどん熱を帯びてくる。こりゃ、すごいや。
演奏とともに歌も終わった。ジャックは我に返ったようにステージ上から観客席を見渡す。一瞬彼の表情が曇った。ウケなかったのかって思ってるぜ、きっと。でも俺は確信していた。観客はどうしたらいいのか分からないのだ。あまりにも素晴らしい歌が聴けたから。大丈夫、もう少し客を余韻に浸らせてあげようじゃないか。
しばらくすると客の一人が立った。そして「ブラヴォー」と叫んだ。それからは阿鼻叫喚っていうのかな、そんな感じでこの曲「アムステルダム」は熱狂的に迎えられた。ジャック、お前ホントにすごい奴だな。俺は彼のためにアコーディオンを弾いている。こんな幸せなことがあるだろうか。
拍手はまだ鳴りやまない。
ジャックは只々立ち尽くしていた。それをぼうっと見ていると彼がこちらを振り返った。どうした?あ、すまんすまん次の曲ね。分かったよ、と思いアコーディオンを弾き出したんだが客の拍手が鳴りやまない。「アンコール」の合唱だ。一体全体どうなっちまったんだい?コンサート3曲目でアンコールが鳴りやまないんだぜ。ジャックよ、どうする?
再び彼がこちらを振り返った。ばかりか、近づいてきた。
「もう1回『アムステルダム』を歌おう」
俺に異存はない。しかしジャック、お前、アンコールは今まで1回もやってこなかったんだぞ。こちらの表情を読み取ったのか彼はニヤリと笑い、
「これも一興だな」
と言い、合図を出した。ショウの3曲目にアンコールに応える。それがあの、今まで頑なにアンコールに応えようとしなかったジャックがやるんだぜ。いやあ、生きてると、いやジャックといるといろんなことに出会えるぜ。普段は気難しい奴だが、こういう意味では全く楽しい奴だ。
この後も順調にショウは進み、みんなが満足して帰っていった。俺たちも大満足だった。唯一人、嵐の真ん中にいるはずのジャック・ブレルだけが穏やかな顔をしていた。
こうして新曲「アムステルダム」は観客の口から、また新聞での評論家の絶賛の嵐からどんどん名曲度数が上がっていった。こうして「アムステルダム」はコンサートのハイライトの場面で必ず歌われるようになった。 ~
またやっちまったよ、妄想タイム。ジャック・ブレルをこれだけで終わらそうなんてとんでもない話である。でもまあ、しょうがないか。僕はボウイの「マイ・デス」で彼を知ったんだからな。いつかもっと壮大に大風呂敷を広げて書きたいものである。
あー、どうしよう。スコット・ウォーカーとデヴィッド・ボウイ。彼らについての妄想も膨らんでいたんだけどなー。今日はやめておこう。一応曲だけは貼り付けておくか。これも聴いて色々な意味でびっくりすると思うな。
明日は1週間の終わりの日。気を引き締めていこう。チャオ!