全部は読みたくない

今日は松村雄策最後の作品である「僕の樹には誰もいない」の発売日だ。僕の手元に届くのは明日か明後日になるだろう。今から楽しみでしょうがない。しかし、である。

 

 

昔、松村雄策は、ジョン・レノンが亡くなって大分たってからのエッセイで「僕には(ジョンの作品で)まだ聴いていない曲がある」「だから僕はジョン・レノンの作品をコンプリートしたわけじゃあない」「それでいいと思っている」というようなことを書いていた。そして何年か経ってから「もう聴いてもいいんじゃないか」と思い未聴の曲を聴いた、という記事も読んだような気がする。

 

 

僕にとっての松村雄策の最後の作品も同じようなものである。これで、この人の新作は読めない、と思うと何とも複雑な気持ちになる。もちろん読みたい。特に彼がどのように自分の病と向き合ってきたかについては読みたい。書いてあるかは分からないけれど。しかしこの本を全部読んじゃうともう終わっちゃうのだ。最新作はもうないのだ。だから全部は読みたくない気持ちの方が今は強い。

 

 

松村雄策について今一度簡単に書いてみよう。今まで書き洩らしたこともあるかもしれないしな。1951年に生まれ、2022年3月12日に亡くなっている。享年70歳。彼の表立った活動は1972年に雑誌「ロッキングオン」の創設メンバーに名を連ねたことから始まる。約50年間、なんやかんやと活動していたわけである。

 

ロッキングン創設と同時にバンド活動の方も続け、1978年にはソロデビューしている。音楽活動は1984年に終了(2014年に元ジャックスの水橋春夫グループに参加。自作曲をレコーディングしている)。文筆の方は、渋谷陽一が書かなくなり、いろいろな人が書いては書かなくなってもずっと毎月書き続けていた。偉い人なのだ。1987年には「苺畑の午前五時」という小説を発表して、一躍「作家さん」になる。その後もロッキングオンの執筆は続けていて、彼のエッセイをまとめた本は何冊も出版された。以下がその本のタイトルである。

 

アビイ・ロードからの裏通り(1981)

・岩石生活(ロックンロール)入門(1983)

・苺畑の午前五時(1987)

リザード・キングの墓(1989)

・悲しい生活(1994)

・それがどうした風が吹く(2000)

ビートルズは眠らない(2003)

・ウィズ・ザ・ビートルズ(2012)

・僕を作った66枚のレコード(2017)

 

その他に渋谷陽一と組んだ「渋松対談」等の共著がたくさんある。プロレス本も作っている。

 

お薦めは何だろう。うーん、やはり入門者は「ビートルズは眠らない」からの方がよさそうだ。僕は「岩石生活入門」が好きなんだけどなあ。「苺畑の午前五時」は50代以上の人にとってはエヴァ―グリーンな作品だろう。若い人にはピンと来ないかもしれない。あと、高校時代から読み始めたロッキングオンで彼がジャックスの紹介をしている文章を今でも鮮明に覚えている。そしてジャックスってどんな音を出すんだろう、と想像したものだ。

 

 

こうなると、ロッキングンで毎月書いていたディスクレビュー完全版なんて出版されないかなあと思ってしまう。レコードによっては(あるいは月によっては)かなり手抜きしている文章もあった。それも含めて読みたいな。

 

 

今日はさんまの筒煮とコールスローとあとは、鳥の胸肉をなんとかしなければいけない。よしっ、作ろうっと。