この4月5月は木曜日の深夜、つまり金曜日の未明に覚醒することが多かった。木曜日の授業は2コマだけで、空いている時間は来週の授業の用意やテストの丸付けをしている。そして定時ダッシュでギター教室だ。明日の金曜の授業は4コマだが、比較的やりやすいクラスだから力を振り絞れば何とかなる。そういう安心感がこんな時間に目を覚ます要因の一つになっているのかもしれない。
となると、新しい音楽が忍び込んでくる機会が多くなることになる。何だかんだ言ってサンディー&ザ・サンセッツからサンディーのソロにいって、その隙間にミュート・ビートとUB40を聴き、大江慎也というかザ・ルースターズまでいったこの数週間だったが、この時間は洋楽がしっくりくる。それに昨日一昨日と昔を思い出したから尚更そんなムードになる。
というわけでロッド・スチュワートだ。彼の音楽はここ数日さり気なく僕の心に入って来ていた。アルバムでいうと「ガソリン・アレイ」(1970)だ。今は「ネヴァー・ア・ダル・モーメント」(1972)を聴いている。この時期のロッド・スチュワートは前から好きだったが、体に沁みるほど聴いてはいなかった。しかし今回はどうも様子が違う。
ロッド・スチュワートは1945年生まれの現在77歳。ジェフ・ベック・グループに加入した頃から頭角を現し(1968年~1970年)、その後フェイセズに加入する(1970年~1974年)。この7年間(大体20代の頃になるか)はかなり忙しかったはずだ。特にフェイセズ在籍時にはグループのヴォーカリストとしてもちろん活躍していたが、同時にソロアルバムも発表している。何でソロアルバム?とも思うけど。しかもメンバーはフェイセズの面々だし。活動ぶりをちょっと書いてみるか。
1969年:「ロッド・スチュワート・アルバム」(ソロ)
1970年:「ファースト・ステップ」(フェイセズ)
「ガソリン・アレイ」(ソロ)
1971年:「ロング・プレイヤー」(フェイセズ)
「馬の耳に念仏」(フェイセズ)
「エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー」(ソロ)
1972年;「ネヴァー・ア・ダル・モーメント」
1973年:「ウー・ラ・ラ」(フェイセズ)
1974年:「ロッド・スチュワート&フェイセズ=ライヴ」
「スマイラー」(ソロ)
これはどう見ても働き過ぎである。でも昔はこんなんだったのかなあ。彼はその後1975年に再びソロとして「アトランティック・クロッシング」を発表し、1980年まではいろいろなヒットをとばす。でもこのフェイセズ時代のソロアルバムが好きなんだよなあ。特に「ガソリン・アレイ」。しみじみといい。もしかしたらフェイセズとソロとの違いは「しみじみ」なのかもしれない。とはいえストーンズ聴いてりゃいいかと思ってフェイセズはあんまり聴いていないから何とも言えないが。
それにしてもロッドの声の冴えは素晴らしい。基本的に彼はソウルシンガーな気がするのだがどうだろう。長らくロック界で活躍してきた人なので、ロックンロールシンガーという印象もあるかもしれないが、今聴くと完全にソウルである。ミック・ジャガーとは風味が違うのである。だから後年幅広い音楽性でもって活動できたのだろう。歳を重ねても声が劣化していないのがミック・ジャガー同様凄いと思う。
ロッドの声を聴くと色々な人がそれぞれ色々な風景や気持ちが引き起こされると思う。僕はロッドの声を聴くと、高3の秋を思い出す。女の子と初めてお付き合いしたあの頃のあれやこれや。体育祭もあった。そして夏から秋に変わる時の風の感じ。つまりは胸がキュンキュンとするのだ。
特に5曲目の「カントリー・コンフォート」がいい。コーラスが入るところはまさに「胸がキュンキュン」する。一度お試しあれ。
というわけで、家に帰ってきた。昨日はギター教室に行き、今日の授業はかなりいい出来で、気分がいい。金曜日の夕方から夜にかけてが1週間で一番心落ち着く時間である。じゃあワインでも飲みながらロッドを聴くとするか。
そういえば昨晩起きてリビングに行ったら妻が「毎日かあさん」を観て鼻水ズビズビで泣いていた。アル中役の永瀬正敏に感動したらしい。その後少し学校のことを話すことができた。よかったよかった。