吠える代わりに睨み続けた

村上春樹は、エッセイを書くネタを常時50個以上持っていて、毎週書くのに「何を書こうかな」なんて困ることはないんだって。さすが、大作家は言うことがでっかい。スケールが違い過ぎる。

 

 

というわけで、今日は昨日一昨日のことを書こうと思う。学校ネタだ。

 

6年の社会が低調だということは、計画訪問の項で書いたが、その時授業をしてない方のクラスの話である。

 

一昨日は、「ききんが起こった時には、百姓や庶民の不満が高まり、百姓一揆や打ちこわしが起きた。それどころか幕府の役人である大塩平八郎までが反乱を起こす始末だった。と同時にこの頃本居宣長を筆頭とする国学が起こり、藩主に意見するようになった」場面の授業をした。

 

最初に打ちこわしの絵図を見せ、「この絵を見ましょう。何が見える」と投げかけた。ところが2名ほどがちいさくつぶやくだけで、他の児童は何も反応しない。挙手もしない。その後もなるべく答えやすいように僕も問いのレベルを下げて尋ねたが、誰も何も言わない。一旦はわり切ってそのまま淡々と続けることにして、大体残り10分くらいで今日学習することを終わらせた。

 

そして、「みんなに質問するよ」と言い、「授業の主人公は誰?」と黒板に書いた。すぐに一番前の児童が「先生」と答えた。ついにここまで学習に対する気持ちが下がっているのかと思いながら、みんなに「授業の主人公は先生だと思う人?」と聞くともう1名が手を挙げた。「他の人は?」と聞くと、何人かが手を挙げた。一人の児童を指名すると「ここにいる私たち全員だと思います」と答えた。「同じ考えの人」と聞くと、2名を除く全員が挙手した。先の2名に聞くと「考えが変わった」と言った。

 

そこで次に「君たちが授業の主人公だとすると、どんな動きをしなきゃいけないんだ?」と聞いた。そうしたらまた誰も挙手しない。僕は「授業の主人公は誰?」の下に「どんな動き?」と書き、「誰も答えない」と書いた。

 

そして「今、先生が『どんな動きをする?』と聞いても誰も手を挙げなかったよね。それに対してどう思う?」と聞いた。また誰も手を挙げなかったのでしばらく待った。そうしたら何人かが手を挙げた。またしばらく待って、さらに数人が挙手するのを見てから僕は指名した。

 

「ほんとは、自分達が何か考えを言わないといけないけど言えなかった。これから言おうと思います」と答えた。他の人も同じようなことを言った。質問に答えてないんだけどな、と思いながら僕は喋り出した。

 

「こういうようなことは、担任の先生にも言われてきた?」と聞くと、頷いている児童が多かった。「どんな教科でこんなことになるんだろう?体育は?図工は?これは大丈夫みたいだね。じゃあ外国語は?外国語の勉強って結構喋ることを求められると思うんだけど」と聞くと「誰か一人が喋って後の人は黙っている」と言ったので「誰?それ」と聞くとある児童の名前を挙げた。「ふうん。そうなんだ」と言うと、名前を出された児童が「俺だけじゃなくて俺と〇〇」ともう一人の児童の名前を挙げた。〇〇児は、このクラスの雰囲気を決定づけている児童である(今週は欠席が続いている)。

 

「話を戻すと、こういうことは担任にも言われていた。それも何回も。そして君たちは今度から頑張るとかって言っていたんだね?」頷く児童たち。「でも、誰も変えようとしない。これが今の姿なんだね?」再び頷く児童たち。「じゃあ、『これから~します』という言葉は今から使っちゃだめだぞ。行動で示せ」と言った。そして黒板に書いたことをそのまま残しておいて、「これ、このまま残しておきなさい。そして担任の先生が『何これ?』と言ったら説明すること。何も言わずに消したらそのまま黙っていればいい」と言って授業を終えた。

 

廊下に出ると、担任が待っていたので「黒板になんか書いといたよ。よかったら子どもに聞いて」と言い残して自分の教室に戻った。この日は教職員全員が学校の外で研修だったので担任と話すことはできなかった。

 

次の日(昨日)の授業は、計画訪問でもう一つのクラスで授業をした場面だった。だから教材研究はバッチリだ。教室に入り、しばらく間を置いて「これまで結構江戸時代のことを勉強してきたけれど、どんなことを勉強してきた?」と尋ねた。しかし、誰一人つぶやかないし、挙手しない。ここで僕は、心の中のギアを上げた。もう遠慮なんてしていられない。ここで勝負しなきゃ。

 

「おかしいって」とまずは児童に向かって言った。「昨日何を喋ったん?こんなことにならないように喋ったんじゃないの?ほんとにこれでいいの?」と言い、教室の隅から隅まで睨みつけた。吠える代わりに睨み続けた。そうしたら徐々に手が挙がり、やがてほとんど全員が挙手した。

 

「じゃあ、自分はあまり発言していないなあ、と思う人は立って」と言ったら全員が立ったから、「ちょっと待って。貴方は発言してるじゃない。そういう人は立たなくていい」と指示して、ほんとに発言していないだけが立っている状態にした。「君らが喋らなきゃいけないんじゃないのか?座りなさい」と言って「じゃあこちらからは指名しないから自分で言おうと決心した人から言いなさい」と指示した。すると、切れ目なく次々と発言が続いたので、再び睨み続けながら黙って聴いていた。内容は隣のクラスから出てきたものより豊かなものだった。

 

一通り終わったので僕は「今のは(先生に)『させられていた』んだよね。だから手も挙げて、発言もしたんだよね。『させられる』から『する』になるようにしなさい。そしたら自分達から『~したい』が生まれるから」と言った。そして「じゃあ今言ったことを黒板に書くからもう一度言って。座ったままでいいから」と言って児童が言った言葉を超速書きで板書した。そこからは隣のクラスのやったように授業を進めていった。課題もスムーズに出たし、それに対する予想も色々出た。最後に「今日の授業を振り返って自分はどういう風に勉強できたかを書いて下さい」と言った。そして「NGワードは『これからは~します』です。そんなことは書かなくていい」と念を押した。僕は今日の授業に対する評価はせずに終えた。

 

この日も担任とは話すことができなかった。しかし、朝印刷室に行った時、担任は若い女先生と談笑していた。僕は担任が何か話しかけるかな、と思って黙って印刷していたが、担任は女先生と談笑を続け、僕に話しかけることはなかった。ちょっと疑問に思った。

 

これからも勝負は続く。僕の考えはハッキリと示した。後は教材研究をしっかりして授業に臨み、児童に昨日したことを忘れさせないようにするだけだ。一番いいのは、このクラスに関わっている先生達と話し合うこと、そして児童たちにその先生全員で問いかける時間を持つこと、だと思うんだけどなあ。もしかしたら担任は今のクラス相対することを諦めているのかもしれない。

 

 

と思っていたら、今日外国語担当の先生と少し話す機会があった。だから、外国語の様子を聞いたら、同じだと言う。僕が「困ってない?」と聞いたら「困ってないですね」と答えた。心の中で驚いた僕は、しかしそれを口にすることはできなかった。こういうところが駄目なんだよね。俺って。もうひとつ突っ込まないといけないのに。でも何で困ってないんだろ?僕の感覚がおかしい?古い?のかな。だとしたらそれはそれで大問題だけど。