hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

まとめに入ったアーティスト達

昨日、17日金曜日に放映された「あさイチ」を観た。ゲストは中谷美紀だった。彼女は凛とした佇まいでその場と視聴者である僕を圧倒していた。まず何に驚いたかというと、話す向きである。ちゃんと聞き手の方を向いて話す。彼女の右手にNHKの女性アナウンサー、左手に博多大吉と華丸がいたが、向く時間がちゃんと均等になるように話していた。これは簡単なようでなかなかできないことだ。

 

そして話は結婚のこととか、現在住んでいるザルツブルクのこととかを話しているが、とにかくその言葉のチョイスがたまらなくいい。硬すぎず軟らかすぎず言葉を選んで話す。そのセンスにうっとりしつつ彼女は淀みなく話すものだから、こちらとしてはどんどん引き込まれていく。

 

中谷美紀のことは古くからなんとなくは観ていた。特に「ケイゾク」は再放送されるたびに観ていたな。ああ、でもその前に「ハルモニア」という堂本光一と共演した土曜日のドラマも観ていたぞ。あれは面白かった。篠田節子原作だったので彼女の本をいろいろ探したものだ。あとは、インド旅行記を何冊か読んだな。「嫌われ松子の一生」「電車男」はなぜか観ていない。

 

その後あさイチを観ていたら、映画紹介コーナーになった。ああ、そうか番宣で出演しているんだ、と思い観ていると面白そうな映画(ギリシャ映画とモロッコ映画)が紹介される。びっくりしたのはその後だ。中谷美紀はアナウンサーに「どうでしたか?」と振られた時に「朝からこんな素敵な映画の紹介をしてくださるなんて・・・」と言って感極まって涙を浮かべたのだ。その後声を詰まらせながらも気丈に話す中谷美紀は美しかった。

 

 

 

というわけで、今回のテーマは「まとめに入ったアーティスト達」である。前に書いたことのあるテーマだけいただいて、当時の文章は読まずに書いてみよう!

 

ロック・ミュージックが何十年も続き、70、80歳を超える人もいる現在、自分のアーティスト人生のまとめに入っていると思われる人たちがいる。今まで発表していなかった作品をリリースする人もいれば、昔のアルバムを再現するライブを行う人もいる。死を意識したり、自身の活動の終焉を予期したりするアーティストが、何らかのまとめをしたいと思う気持ちは僭越ながらよく分かる。今日はそんな人達の中から何人か僕の知っている人を紹介してみよう。

 

まず、一番上手く「まとめ」活動をしているのではないか、と思われるのがボブ・ディランである。例の「ブートレッグ・シリーズ」である。初めてブートレッグ・シリーズ第1~3集が発表されたのは、1991年のことであった。その後1998年には伝説の「ロイヤル・アルバート・ホール」のライブ、2002年には「ローリング・サンダー・レビュー」のライブと、ファン垂涎の作品が発表される。しかしこの頃の「ブートレッグ・シリーズ」はレアな作品を出しましたよ、みたいなニュアンスが濃厚でファンも「ワオ!」と飛びついたものであった。

 

しかし、2005年「ノー・ディレクション・ホーム」(映像と一緒にディランの最盛期ぶりを発表)以降の「ブートレッグ・シリーズ」は結構マニアックなものになっていったと思う。僕も買うには買ったが聴き込むことはなかった。その頃から「ブートレッグ・シリーズ」に「人生のまとめ色」が入ってきたと推察される。つい最近も第16集がリリースされた。アルバムでいうと「ショット・オブ・ラブ」「インフィデルズ」「エンパイア・バーレスク」のアウトテイクやリハーサル音源だ。ここまでやればディランも納得だろう。もう後は、誰か信頼できる人に任せた、俺が死んでもやりたきゃやりなさい、という心算なのではなかろうか。

 

 

ディランと同様な形で「アーカイヴ・シリーズ」を発表しているニール・ヤングは、上手くいっていない方だ。だってまだ1970年代だよ。50年分、どうするんだよ。いや、「アーカイヴ・シリーズ」の内容は素晴らしいんだけどね。ちょっと急ぎ足でリリースしないと死んじゃうよ。僕は今はノイジーニール・ヤングよりアコースティックなニール・ヤングを好んで聴いているが、1970年代以降もアコースティック路線でいい作品はいっぱいあるよ。頼むよ、ニール。

 

 

「ああ、こんなことするようになったんだ」と僕が思ったのは、ローリング・ストーンズの「スティッキー・フィンガーズ」の再現ライブだ。確かアップルミュージックで購入した覚えがある。多分2015年だ。そうか、「シスター・モーフィン」がライブで演奏されるのか、と思ったものだ。その後、映像も観ることになるのだが素晴らしい出来だった。昔の名アルバムを丸ごとライブで演奏しちゃう、というアイディアがコロンブスの卵みたいで気に入った。これも「まとめ活動」に入るだろう。その後もストーンズは過去の作品のデラックス・エディションやライブ作品をばんばん発表する。これはストーンズの面々も納得ではないだろうか。10月には「タトゥー・ユー」のデラックス・エディションが発表される。

 

パティ・スミスは現在74歳。3年前に「ホーセス」の再現ライブを敢行した。ユーチューブで観たが、圧巻のコンサートだった。70過ぎてもまだ唾をペッと吐いているパティには痺れたぜ。これも「死ぬ前に是非やっときたいこと」だったのではないだろうか。

 

日本では頭脳警察だ。2018年に「BRAIN POLICE RELAY POINT 2018」というライブアルバムを発表している。これは1972年発表され、すぐに発売中止になった「頭脳警察セカンド」の曲をメインに収録されたアルバムである。「頭脳警察セカンド」が再発売されたのは確かパンタが「KISS」を発表した頃だから1981年頃だ。僕は当時「KISS」より、こっちに狂喜乱舞していた。「いとこの結婚式」というのどかな(?)ナンバーまで収録されている。これも「やっておきたいこと」だったのだろう。

 

 

ボブ・ディランニール・ヤングローリング・ストーンズパティ・スミス頭脳警察について書いてきた。他にもまとめに入っているアーティストはいるだろうし、そろそろかな?と思っている人もきっといるだろう。デヴィッド・ボウイやプリンスのように、死後何らかの形でリリースされる作品も嬉しいが、アーティスト本人が納得して創った作品はやはり何物にも代えがたい。