hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

初めての参観日

小学校での初めての参観日、つまり1年生になって最初の参観日(4月中旬頃だろう)に僕は出席しなかった(朝から学校にはいたんだよ)。正確に言うと最初の35分は参加しなかった。

 

今から書くことは多少の脚色を交えたノンフィクションである。(そんな大げさなものではないが)

 

参観日の朝、僕は母に一張羅を着せられた。白いシャツと黒い半ズボンと白いソックス。恥ずかしかったけれど、嬉しくもあった。参観日なんだから頑張らなきゃ、という思いもあった。母からは「頑張ってね」と言われて送り出された。

 

午前中は普通に勉強していた。給食も嫌いなものが出なくてラッキーだった。さあ、昼休みだ。今日は天気がいいから運動場で遊ぼうぜ、と誰かが言ったので、僕もその話に乗った。少し遅れていくとみんながいた。みんなは運動場を平らにするローラーの周りに群がっていた。

 

「すげーな、これ動くかなあ」と言う友だちもいたし、実際に触ろうとする友だちもいた。それは問題ないのだが(←問題あるか)、ローラーの周りに水たまりがあることが問題だった。

 

やがてローラーに飽きた友達は、水たまりで遊ぶようになった。ズックの先で水を飛ばしたり、ピチャピチャとズックの底に水を当てたりするようになった。僕も友達に倣っておんなじようなことをした。それにも飽きた僕たちはその場所で鬼ごっこをするようになった。ああ、楽しい、と思いながら走っていると、突然体に衝撃を受けた。何が起こったかよく分からなかった。

 

気づいたら水たまりに正面から突っ込んでいた。「あはは、何してんだよ」と周りから囃し立てられた。僕は屈辱感を覚えながら立ち上がった。白いシャツが泥だらけになっていた。勿論黒い半ズボンも茶色だ。白いソックスも茶色。

 

しばらく立ち尽くしていた僕に、「ごめん」と謝った友達がいた。どうもその友達が僕にぶつかったらしい。2人して立っていたらチャイムが鳴った。「お前らどうすんだよ」と捨てゼリフを残して友達は教室へ戻っていった。

 

僕達は2人でずっと突っ立ったままだった。時々水たまりを蹴ったりはしたが、ほとんど何もせず無言だった。どちらからも「教室に行こう」という言葉は出てこなかった。

 

ああ、今頃母はどう思っているだろう。先生はどう思っているかな。友達が何か言ってくれるかな。しかし誰も助けに来てくれない。遂にどちらからともなく「教室に行くか?」という言葉が出た。

 

のろのろと校舎に向かって歩く。廊下は保護者で溢れかえっている。泥だらけの僕を見て「まあ、大丈夫?」と声をかけてくれる人もいた。そして遂に自分の教室の入り口に着いた。

 

僕は意を決してガラガラと戸を開けた(そう。戸は閉まっていたのだ)。一瞬、先生も座っている同級生も固まったように見えた。先生は優しい表情を作って僕達に話しかけようとしているようにみえた。

 

と、その時目の端に素早く動くものがあった。母だった。後ろに他の保護者と並んでいた母がダッシュで教室の前に来たのだ。「あんた、何しとれんて!」と言いながら僕のシャツについたままの砂を払ってくれた。僕は怖くて怖くて動けなかった。やっと先生が優しく「じゃあ席について」と言ってくれた。

 

その後、簡単な計算プリントが配られた。簡単なので答えは分かるが手は震えてしょうがない。こっそり左手を右手に添えて、答えを書くことができた。

 

その日帰ってからの母は不機嫌だった。しかし、父や姉の前で僕を罵倒するようなことはしなかった。

 

というわけで、僕はこんなに内気な子どもだったってことや、それでも小学校時代から何とかやってきて今ここにいるんだよ、と児童に話している。