惨劇は学校で起こった。
アップルミュージックからニール・ヤングを紹介された僕はそのリストを見てビビった。139曲、8時間46分である。一体いつ聴くんだよと思い、これは十分吟味しセレクトしなければ、と思い1曲目から聴いていった。
3曲目を聴いている時に、画面が暗くなったので、タップしようとしたら薬指が先に触れてしまった。触れた先はダウンロードのマークがついているところだった。一瞬にして139曲、8時間46分がダウンロードされ始めた。どうしよう、ともたもた考えているうちにもう半分ほど進んでいるじゃないか。
これはもう諦めて、ニール・ヤング三昧の日々を送ることにするか、と決心した。一体どんな作品なんだ?
調べてみると、今回の「アーカイブシリーズVOL.2」は1972年~1976年までの作品を139曲にまとめたものらしい(「アーカイブシリーズVOL.1」は1963~1972年までの作品。12年前に発売された)。VOL,1は10年分だ。これは分かる。しかしVOL.2は3年半分らしい。これはどういうことだ。
どうもこの時期のニール・ヤングは僕の中からすっぽりと抜けている(「TIME FADES AWAY」「ON THE BEACH」「TONIGHT’S THE NIGHT」「ZUMA」「LONG MAY YOU RUN」の5作品)が、かなり多作な時期だったらしい。と言ってもニールはいつだって多作だけれど。
それで、実に62曲が未発表ヴァージョンや未発表曲だということで、まあすごいことになっている。その中にはジョニ・ミッチェルのカバーや、76年初来日時の日本武道館公演とロンドン・ハマースミスオデオン公演をカップリング収録したものもある。12曲がこれまでどんな形でも世に出ていない、今回初お目見えの未発表曲らしい。
肝心の内容は、一聴すると(実はまだ最後まで聴いていない。つまり一聴していないのだが)単純にいい曲がたくさんあるな、と思った。流しっぱなしにしていてもいつの間にかふと手が止まり、ニール・ヤングの紡ぎ出すメロディに耳をそばだてている感じだ。いつもは彼の声がまず僕をウットリとさせるのだが、今回は声プラスメロディだ。ニール・ヤングの声の鶏声度数は曲によってオリジナルアルバムより低い。探り探り録音していたヴァージョンだからかな。
話は変わるが、ボブ・ディランは正解だったな。早い時期から「ブートレッグ・シリーズ」を多数発表している。もういつ何かが起きてもボブは思い残すことはないんじゃないかな。
対してニール・ヤングはどうだ?今は2021年でアーカイブシリーズはやっと1976年まで終わった。あと、45年分をどうするつもりだろう。
もうちょっと詳しくチェックしてみるか。
ディスク1「エヴリバディーズ・アローン」
ディスク2「タスカル―サ」・・・一足先に発掘リリースされた。73年のライブ。
ディスク3「トゥナイツ・ザ・ナイト」
ディスク4「ロキシー:トゥナイツ・ザ・ナイト・ライブ」・・・2018年に発掘リリース
ディスク5「ウォーク・オン」・・・1973~1974年の作品を詰め込んだもの
ディスク6「ジ・オールド・ホームステッド」・・・程度の差こそあれすべて未発表音源
ディスク7「ホームグロウン」・・・「幻の名作」として知られる
ディスク8「デュム」・・・1975年「ズマ」が生まれた時のセッションの記録
ディスク9「ルック・アウト・フォー・マイ・ラブ」・・・聴き応えあり、だそうだ
ディスク10「オデオン・ブドーカン」・・・2か所のライブ
分かる人には分かるタイトルなのかな。僕がさっきメロディ云々と書いていたのは、多分ディスク3,4以降のアコースティックな曲のことだと思われる(なんせ流しっぱなしだからよく分からないんだよ)。「トゥナイツ・ザ・ナイト」はヘビーなアルバムだということは知っていたが、ディスク4のライブはかなり荒んでいた。
あと、僕は知らなかったがニール・ヤングは音質にうるさい人だったんだ、ということが分かった。
それにしてもとんでもないところに足を踏み入れたものだ。