トモフスキーについて根性を入れて書いたことはなかったな。1回だけ書いたことがあったけど。今回は前より根性を入れて書こう。
トモフスキーは、本名大木知之。元カステラのヴォーカリストで、現在55歳のシンガーソングライターである。トモフスキー(TOMOVSKY)というアーティスト名は本名をロシア語っぽくもじったとされるが、これはトモフ(普段はこう呼ばれる)の大発明だ。僕は初めてその名を聞いた時、何やら怪しげなロシア人だと思ったし、後で本名をもじったことを知った時はあまりにお茶目に感じて彼のことが大好きになった。
活動の始まりは、カセット販売からである。CDの時代にカセットだよ。いやあ今考えても素晴らしい。作った曲を宅録し、音楽誌に配って歩いたり通信販売したりすることから始めたのだ。こういうDIYな姿勢はカステラ時代のトモフのイメージと少し違うな、と思った。それを3本作ってから、メジャーデビューする(1995年)。
1995年3月24日「WALTZ」、9月1日「TEAM」、1996年1月21日「うしろむきでOK!」とシングルCDを発表し、同年3月21日にアルバム「NEGACHOV&POSICOV」(ネガチョフ&ポジコフ)を発表。発表したCDのジャケットは全てトモフ自身が描いたものだ。そのジャケットに惹かれて僕は2枚目の「TEAM」を買った。それ以来の付き合いになるからもう25年になるか。何だかんだ言ってこの25年の僕のフェバリットベスト3に常に入っている(あとの2人は平沢進と遠藤ミチロウ)。
「TEAM」(4曲入り)では「明るくなくていいのに」という曲が特にお気に入りだった。
♪明るくなくていいのに/明るさはいつも/その分誰かを暗くしている
♪ひまわりみたいに/明るい誰かは/自分のせいでできるカゲに気づいてない
♪明るさがほめられるのは/子供の頃だけ
「明るい」ことはいいこととされる風潮の世間に真っ向から反論するこの歌は明るいメロディで歌われる。そのことにも爽快感を持った。ただ「なるほど、こういう歌を歌うんだね」といった段階だった。
その後「スペースシャワーTV」で偶然彼のライブを観て俄然興味を持った僕は、3rdシングル「うしろむきでOK!」を聴き衝撃を受け、アルバムの発売を待った。
アルバムの発売を心待ちにする、というのも久しぶりの体験だったが届いたファーストアルバムの内容にさらに衝撃を受けた。
その前に「うしろむきでOK!」について書かねば。タイトルから分かるように勿論「人生頑張ろうぜソング」ではない。彼はよく「もっと前向きに考えていこうよ」とか「建設的に」とか言う輩に大変違和感を持っていた。でもトモフはこう言う。「君の言う前向きって何?なあなあで済ませようったってそうはいかないよ。それが大人ってことかい?それこそが実は後ろ向きなことじゃないの?そんなこと言う奴らが俺のことをうしろ向きって言うなら俺はそれでいいよ。俺の向いてる方こそ実は前向きだと思うな」と。それをキャッチーなメロデイにのせて堂々と歌っている。
つまり彼は、世間という曖昧なものに取り込まれず、おのれの感じることをそのまま歌にしているのだ。それが世間的にマイナスと言われることでも。戦っているのだ。ロッカーなのだ。
♪君もあの人も 同じ事、言う 前向きになれと 前向きが大事だと
♪僕には後ろ向きって 自覚症状がない
♪長い目で見たら 本当はこっちが前かもよ
♪でもうしろ向きで 何が悪いの?
♪居心地が良くて 結構ラクなのに
(うしろ向きでOK!)
「ほんと」のことを歌うトモフに僕は夢中になった。
(続く)