hanami1294のブログ

現在休職中の小学校教員のつぶやきです(只今復職中)。

僕を寒い寒いところへ連れていくアルバム

それはドゥルッティ・コラム「リターン・オブ・ザ・ドゥルッティ・コラム」(1979)とアルヴォ・ペルトタブラ・ラサ」(1977)である。

 

僕がドゥルッティ・コラムのこのアルバムを買ったのは高校時代だった。今思えば大冒険である。情報がほとんどなくて、ファクトリー・レコードから鳴り物入りでリリースされていたこと、何だか知らないが異様にやせ細った人(ヴィニ・ライリー)が写真に写っていたことくらいしか知らなかった。レコード屋でジャケットを見ると3枚の小さな素敵な絵が描いてあった。これに魅せられて買ったのだ。全編インストゥルメンタルだということは聴いてから分かった。

 

あれからもう41年経つが、未だにこれを聴くといつも遠い異国の寒い土地に連れていかれる。「スケッチ・オブ・サマー」というタイトルの曲であってもだ。ほとんどがリズムボックスとギターだけで作られているが、不思議なことにこの組み合わせがいい。何と言っても、ヴィニ・ライニ―のギターだ。このバンド(プロジェクト)の前はパンクロックをやっていたらしいが、そこを通過してのギターは、青白い炎(←この言葉、何回使っただろう)を感じさせる。エレキギターの音色の作り方は分からないが、薄くディレイ(?)がかかったその音色が僕を寒い土地に連れていくのは間違いない。どうやったらこんな音が作れるのか、ぜひ聞いてみたい。ギタリストの音色(自分の音)に対する執念は並々ならぬものがあるに違いない。

 

寒い地方どころか、厳寒のシベリアに連れていかれるのは、アルヴォ・ペルトの「タブラ・ラサ」である。ギドン・クレーメルが参加しているというので知人に紹介してもらったのだが、5曲55分、ずっとこの世のものでない音が鳴っている。正直言うと「怖い」。この作品を真剣に聴いていると(聞き流すことは出来ない)、かすかに「死」の世界が見えるように思う時がある。それもあって「怖い」のだ。しかし何故だか僕はこの作品を周期的に聴きたくなる。そのたびごとに美しさ、怖さを感じ、自分が厳冬のシベリアに立っていることを想像してしまうのだ。決して複雑な楽曲ではなく、どちらかというと単純な構造であると思われる。それなのにこの美しさなのはどうしてなのだろう。

 

ドゥルッティ・コラムアルヴォ・ペルトが作る音楽について書く時はどうも具体的なことを書いても(楽器編成や楽曲の構造等)上手く伝えられないようだ。かと言って抽象的にも文学的にも書く素養は僕にはない。これで精一杯だ。「タブラ・ラサ」については「この世のものとは思えない音」という常套句しか思い浮かばない。