3人というのは、カール・パーキンス、エルビス・プレスリー、ジョンレノンのことである。
一言で3人のヴァージョンを表すとしたら、カール・パーキンス「発明?」、エルビス「勢いがある!」、ジョン「余裕ありあり(なふり)」かな。
まずはカール・パーキンスである。1956年発売である(B面は「ハニー・ドント」)。ジョニー・キャッシュに「こんなの作れよ」(「俺のスエード靴を踏むなよ!」)と言われたが一旦断ったらしい。しかし、自分のコンサートでも同じセリフが聞こえてきたから作ろうと思いたち、なんと15分足らずで仕上げたそうだ。曲の長さは2分18秒。すごいな。ちゃちゃっと作った曲が世界中の人を魅了するのだから(ロックンロールの世界では往々にして聞く)。この曲はカール・パーキンスの「発明」なのだろうか。特に最初のところは。でも、「ワン・フォー・ザ・マネー、トゥー・フォー・ザ・ショウ」は「1つ目はカネの為、2つ目はショウの為」という意味でアメリカ南部のブルースシンガー達が歌っていた常套句だそうだ。
カール・パーキンスを聴いてエルビスヴァージョンを聴くといやあ、若いっていいっすね、となる。勢いが違う。当時のパンクだったんじゃないかと思われるような性急さである。でも曲は2分ちょうどである。カール・パーキンスとあまり変わらない。歌い方が性急だということか。その歌い方もかっこいいし、ギターソロもかっこいい。エルビスの他の名曲も聴きたくなる。「ブルー・スェード・シューズ」は「ハウンド・ドッグ」の次のシングルとして発売された。1956年発売のデビューアルバムの1曲目である。そう、カール・パーキンスと同年に発売されているのだ。
ジョンのは、トロントで行われたプラスチック・オノ・バンドのものだ。最初のMCが長くてちょっとイラっとするがそれが終わるとジョンの登場だ。もごもごと挨拶をしておもむろに「ブルー・スェード・シューズ」を始める。テンポはゆっくりめだ。長さは2分21秒。それこそ下積み時代に何千回も演奏しているであろうこの曲を1曲目に選んだのは、何年振りかのコンサートだったからだろう。自分の身に沁みついている曲だから反射神経でできると判断したのだろう。余裕しゃくしゃくにも聴こえるが結構緊張していたんだろうな。それでも演奏できている自分に驚き、嬉しく思っているようでもある。ジョンがバンドを率いているというより、バンドがジョンを支えてくれているように聴こえる。いや違うな。バンドも手探りだったんだろうな。ぶっつけ本番だったんだもの。この後だんだんジョンやバンドのエンジンもかかってくるんだけどね(「ヤー・ブルース」は最高だ)。「ブルー・スェード・シューズ」を聴くと結局「ギヴ・ピース・ア・チャンス」まで聴いちゃうんだよなあ。
曲自体が素晴らしいからどのヴァージョンでも楽しむことができる。