最後の最後まで粘るクリント・イーストウッド90歳

2018年に「運び屋」が上映された時は驚いた。監督、主演?大丈夫なのか?疑問符が続いたが心配は杞憂に終わった。

 

前にクリント・イーストウッドのことについて書いた時は、「観ていて気持ちがいい」「人生のまとめに入った人」として書いたように記憶している。そして「老い」をテーマにすると、もう役柄も決まってしまうんじゃないかという危惧を持っていることも書いた記憶がある。

 

「老い」に絞って彼の作品歴を見ると、1992年の名作「許されざる者」からそれは始まっていることに気づかされた。その後、「シークレット・サービス」(1993)「スペース・カウボーイ」(2000)「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)「グラン・トリノ」(2008)「人生の特等席」(2012)「運び屋」(2018)とどの時代にも「老い」は彼の中で重要なテーマだったと思われる。しかもそれを娯楽映画の中でやっているんだからすごい。

 

しかし、僕の中では「グラン・トリノ」でそれは終わったと思っていた。「気難しい頑固な爺さんが織りなす珠玉のドラマ」は。他に彼に似合うキャラはない。それで「運び屋」が上映されると聞いてびっくりしたわけだ。また「気難しい頑固な爺さん」をやるのかと思って。しかし映画は僕の想像の遥か上をいっていた。

 

「運び屋」は、87歳の老人がひとりで大量のコカインを運んでいたという実際の記事を基に作られた。家族をないがしろにし、仕事一筋に生きてきた主人公アールは、商売に失敗して孤独な90歳の老人になっていた。その時車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられた。簡単な仕事だと思って引き受けたアールだったが、それは麻薬の運び屋の仕事だった・・・。

 

悩んだ末に「運び屋」としての仕事を続けることにしたアールだったが、素直に目的地に行くはずもなく(パンクして困っている家族を助けたりおいしいサンドイッチ屋さんに入ったり長年連れ添った妻を看取ったり)、マフィアをはらはらさせる。次第に大量のコカインを任されるようになったアールをFBIも必死で捜索する。最後は、つかまっちゃうわけだが、観終わったら何とも言えないじわっとした清涼感を持つ映画だった。

 

小さなエピソードの一つ一つがたまらなく愛おしい。脚本(「グラン・トリノ」の脚本家)がいい。クリントのことを知り尽くしていて、そのうえでいろいろなエピソードを積み重ねていったのだろうと思わされる。本作は「頑固でチャーミングな爺さん」になっていた。そう。クリントは実はとってもチャーミングなのだ。

 

現在クリントは90歳。とことん映画が好きなのだろう。そしてとことんまでやる所存なのだろう。今も新作(監督・主演!)を手掛けているらしい。