「鴻上尚史のほがらか人生相談」が評判だ。まだ読了していないが、読んでいる時に思い浮かべたのは、今は亡き橋本治だった。
橋本治は膨大な著書を残しているが、「宗教なんかこわくない!」「ぼくらのSEX」「貧乏は正しい!」シリーズといったわりと若者向けの本から僕は読み始めた。それらの本(基本的に評論本もそうだが)では、まず「前提」、そして「言葉の定義」が延々と書かれている。「人間が宗教を必要になったのは」とか「そもそも宗教って何?」等の話を延々と書く。それを経てやっと「宗教なんてこわくない!」の話にいくのだ。
そしてここが僕の甘さなのだが、「前提」と「言葉の定義」を読むともうお腹いっぱいになってしまって分かったような気持ちになってしまうのだ。(そういえば、昔付き合っていた女性に「論争に勝つためには、その人が使った言葉の定義について問い続けると絶対負けない」と言われたことを思い出した)
鴻上尚史の人生相談を読むと、相談している人の文章を丁寧に読み込んで、まず「前提」から話しているように思う。その上で相談者がポジティブにその「前提」をとらえられるように答えている。そして問題を整理してこれまたポジティブな回答を示しているように思えます。
なぜこんな素敵な回答にまで導くことができるのか。それは、日々鴻上尚史が大きなテーマを考え続けているからだ。なぜ考え続ける事ができるのか。それは、鴻上尚史の仕事にも関係しているかもしれない。(でもそもそも人間って…って考え続ける人だからこそ演劇の世界に入ったのかもしれない)。
何はともあれ、「前提」と「定義」に時間を割く人は信用できる。だからタイトルは本当は「鴻上尚史は現代の橋本治である」の方がピタッとくる。